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緊張もそこそこに、他愛ない話を交えながらも楽しい食事はあっという間に終わりを迎え、段々と見栄を張って予約したのを若干後悔してきてしまった──見栄を張ったくせにお会計が伝票な店なのが少々恥ずかしくはあるけど──しかし、今更後悔したところで遅い。ぐっと覚悟を決めて伝票を掴み歩み出すとその伝票がひょいっと抜き取られた。
｢えっ、志麻さん｣
｢生憎女の子に奢らせるほど困ってないんでね｣
儲かってもいるし、なんて冗談を言うかのようにカラカラ笑ってる彼。
｢どうしてもお礼したいならずっと俺の事推してて｣
それでいいから、むしろそれがいいと続ける彼に目を何度も瞬かせた。
｢そんなことでいいんですか？｣
｢まぁ、俺にとってはそんなことなんかじゃないからね｣
そんな言葉が嬉しくてたまらなくて走り出したい気分。─────生憎私にはファンと食事しちゃダメですよと言えるほど善良なファンじゃない。願わくば、そればかり考えている欲望に忠実なオタクなのだ。
｢あっ、でも推しに私の分を払わせる訳には……｣
｢いいから。こういう時は黙って奢られなさい｣
｢……はい｣
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