まふまふ警戒症 ― Another story ―

＊ ページ7

まふまふside
　
　
　
　
　「……ま ふ ま ふ」
　
　
　ヘッドホンから流れ込む彼女の口から溢れ出た自分の活動名。驚きすぎて思わず椅子から転げ落ちた。その物音に気づいたのか呆気に取られたように固まる彼女。それから小さく笑みを零した。可愛い。そして、スマホをじっと見つめる彼女。よく目を凝らすと自分の動画が表示されてることに気づいた。それを見て覚えた感情は焦りよりも疑問だった。何故？何日間も彼女を見てきたけどまふまふのことを知ってはいるとは思うけれど好きだという行動はとってなかった。だとしたら​──────あのカフェに一緒にいた彼女？たしか、なんでも屋に一緒に来てた子と同じだったような。まぁ、そこはどうでもいい。けど、今開かれているのはユニット曲。そらるさんを好きにならなきゃいいけど……
　
　
　
　『そらるさん……か。声、好きだなぁ』
　
　
　
　しかし、そんな思いも虚しく彼女は彼の声を気に入ってしまったようだ。やり場のない怒りを思わず机にぶつけてしまった。……彼女のことになると本当に冷静でいられなくなる。ヒリヒリと痛む拳を見つめて後悔しているとスマホの通知音が鳴った。
　
　


　『凄い音したけど大丈夫ですか？』
　
　


　と綴られていて心配されたことに思わず頬が緩む。嗚呼、なんて言い訳しようかと考えているとにゃーんといろはが擦り寄ってきた。
　
　


　「あ、ご飯？ちょっとまっててね」
　
　


　そろそろそんな時間だなと思いキッチンに行こうと歩きだそうとした時これだと思った。うちの猫が暴れ回ってるんです。うるさくてすみませんと手早く打った。我ながら名案だ。動物なら大きな物音を立てたところで何も不思議に思わないはず。それに、あわよくば猫が好きだったら話が弾む。
　
　


　
　『猫飼ってるんですか！？』
　


　
　すると嬉しそうに返事が返ってきた。​
　
　
　


　
　─────嗚呼、ほんと思い通りに行き過ぎて怖いくらいだ。
　
　
　

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