＊ ページ24
Aside
『そらるさん』
会社から出ると、壁にもたれてスマホを触ってる彼。服汚れるよ、なんて思いながらも苦笑しながら声をかけた。
｢A｣
すると、花が咲いたみたいに可愛く笑うそらるさん。胸がドキッと跳ねた。ドキドキと心臓の音がうるさい。けど、それを気にしないように笑みをむけた。
『行こう？』
──────
────
──
『美味しかったね』
私がそう言うと、同意の言葉をくれた彼。それに満足しながらも、あれが美味しかった、なんて一方的に話して、彼は相槌を打ちながら聞いてくれる。そして、折角だし何かデザートを買って帰ろうなんていう話の流れになり、近くのコンビニに立ち寄った。
「いらっしゃいませー」
ドアを押し開けると、同時に聞こえる店員の声。そのまま前に進んでいく、そらるさんの姿を追いかける。すると、突然止まり、その背中にぶつかった。
『痛っ……ちょっと、急に止まらな』
そらるさんの横に行きながら口にした言葉は、最後まで紡ぐことが出来なかった。
「まふくん、これ新作だって」
「へー、美味しそうだね。買う？」
なんて、聞き覚えのある声がした。腕を組んで、楽しそうで。幸せそうで。痛いくらいに、唇を噛んだ。そして、彼女を見つめる。幸せそうな、楽しそうな。そして、左手には二人の関係の証。胸が痛い。
─────すると、突然。彼女がこちらに振り返った。私とそらるさんの存在に気づき、私を見て笑った。その嘲笑は見下すように冷たく、残酷だった。そして、私の足は勝手に動く。
「Aっ」
慌ててそらるさんが追ってくるのがわかる。でも、気にせずにその扉を押し開け、飛び出した。もう、何も見たくなくて。聞きたくもなくて。傷つきたくなかった。
「Aっ！」
今度は、さっきよりも大きい声で呼ばれ、腕を引っ張られる。すると、聞こえてくるトラックのクラクションの音。それを聞いて、轢かれそうになったんだと自覚して、一気に青ざめた。
「A」
お願い、彼方。そんな声で呼ばないで。可哀想なんて思わないで。
『嫌だ。もう、嫌……』
こんなにも叶わない恋を諦められない自分も。私を嘲笑った彼女も。
「大丈夫、大丈夫だから」
何が、大丈夫、なのだろうか。でも、そう言って私を抱きしめた彼の腕が、暖かくて。酷く、安心した。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
潮田 陽菜(プロフ) - ろあ。さん» 歌のような恋、とても素敵な表現ありがとうございます(*^^*)そう言って頂けて有難いです。コメントありがとうございましたm(_ _)m (2021年2月26日 1時) (
レス) id: 71e4183107 (このIDを非表示/違反報告)
ろあ。(プロフ) - 歌のような恋ですね。。。なんというか、その、甘酸っぱい感じ？がします！私にはこんな素晴らしいお話書けそうにないのでとっても尊敬してます！ (2021年2月24日 21時) (レス) id: edab8e7c8b (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - トリ@推しキャラたくさんさん» コメントありがとうございます！私的に、そらるさんの感情を書くの、すごく難しくて^^; そう言っていただけて嬉しいです(*^^*)これからもこの作品を宜しくお願いしますm(_ _)m (2018年3月21日 16時) (レス) id: b5c447886f (このIDを非表示/違反報告)
トリ@推しキャラたくさん(プロフ) - コメント失礼します。このお話、すごく感動しました！そらるさんの夢主ちゃんを思う気持ちが切なくて、思わず泣いちゃいました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございます！更新頑張って下さい！！ (2018年3月20日 19時) (レス) id: 0fc1208a5a (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - いちごみるくさん» いえいえ、きちんと言ってもらえる方がコチラとしては有難いので(*^^*)皆さんに読みやすいものを提供できるように色々探してきますねっ！これからもこの作品をよろしくお願いしますm(_ _)m (2018年3月10日 17時) (レス) id: b5c447886f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
