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Aside
『…私ね、当たり前だと思ってた。真冬の隣にいるのは、自分で、ずっとそれは変わらないって…なのに、違った』
声が震える、けど必死に笑顔を作って、続ける。
『真冬は、私よりあの子を好きになった…分かってるよ。何一つあの子にはかなわない事。』
それに、そらるさんは何も言わず、ただ寄り添って聞いてくれて、それが酷く安心した。
『私だって、真冬に幸せになって欲しい。けど、それが自分以外の相手でもいいなんて思えるほど、私はいい子じゃないし、大人でもないの』
本当は、私を好きになって欲しかった─────
抑えきれなくて、涙が零れる。けど、泣いているのをなんだか見られたくなくて、彼に無理やり作った笑顔を向けた。
『ごめんね。こんな、自分語り』
私が、そう言うと、彼は不快そうに顔を歪め、私を抱きしめた。髪が首筋に当たって擽ったい。
「A」
いつもより、少し低い低音が辺りに響く。その声に、何故かドキリと胸が跳ねた。
「無理に笑わなくていいから」
そう言って、ぎゅっと更に強く抱き締められて、気づかないうちに、大粒の涙を流していた。
「俺も、同じだから。分かるよ。俺だって、好きな人に好きになって欲しかった。…自分を見て欲しかった。でも、アイツは俺のことなんて全然見てない。いつだってあいつに夢中なんだよ…」
きっと、あの子のことを思って言っているのだろう。首筋が濡れて、彼も泣いているのがわかる。私は、その柔らかいくせっ毛な髪をそっと撫でた。
『──────似た者、同士だね』
お互いに、好きな人に見てもらえない私たち。お互いが、お互いを好きになれたら良かったのに。そしたら、みんな幸せなハッピーエンド。けど、それがどうしても出来ないのは私が、真冬が好きで、そらるさんはあの子が好きだから。
誰かが、言ってた。
誰かの恋が実ると、その裏で、失恋して泣いている子がいる。誰かが幸せになれば、誰かが不幸になる人がいる。それの後者が私たちだった。似た者同士、慰め合うことはいけない事なのだろうか?いや、きっとそんなことないはずだ。
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潮田 陽菜(プロフ) - ろあ。さん» 歌のような恋、とても素敵な表現ありがとうございます(*^^*)そう言って頂けて有難いです。コメントありがとうございましたm(_ _)m (2021年2月26日 1時) (レス) id: 71e4183107 (このIDを非表示/違反報告)
ろあ。(プロフ) - 歌のような恋ですね。。。なんというか、その、甘酸っぱい感じ?がします!私にはこんな素晴らしいお話書けそうにないのでとっても尊敬してます! (2021年2月24日 21時) (レス) id: edab8e7c8b (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - トリ@推しキャラたくさんさん» コメントありがとうございます!私的に、そらるさんの感情を書くの、すごく難しくて^^; そう言っていただけて嬉しいです(*^^*)これからもこの作品を宜しくお願いしますm(_ _)m (2018年3月21日 16時) (レス) id: b5c447886f (このIDを非表示/違反報告)
トリ@推しキャラたくさん(プロフ) - コメント失礼します。このお話、すごく感動しました!そらるさんの夢主ちゃんを思う気持ちが切なくて、思わず泣いちゃいました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございます!更新頑張って下さい!! (2018年3月20日 19時) (レス) id: 0fc1208a5a (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - いちごみるくさん» いえいえ、きちんと言ってもらえる方がコチラとしては有難いので(*^^*)皆さんに読みやすいものを提供できるように色々探してきますねっ!これからもこの作品をよろしくお願いしますm(_ _)m (2018年3月10日 17時) (レス) id: b5c447886f (このIDを非表示/違反報告)
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