ツキウタ。＆ツキプロ [短編集]

気づけ / 在原守人 ページ23

私の好きな人は無自覚タラシだ。




毎日必死にアピールしてるのに全然気づかない。







他の女の子みたいに告白する勇気もないから今日も少しづつ距離を縮める。








『おはよう、在原くん！』





守｢おはよう、髪型変えたんだね。似合ってる｣






そう微笑んでくれるけど別の言葉を期待していた私がいた。









『重そうだね、手伝うよ！』





守｢ああ、ごめんね。ありがとう｣




『これ、どこまで運ぶの？』




守｢理科室だよ｣






他愛もない会話をしながら少し離れた理科室まで2人で資料を運ぶ。




…女子の目線が怖かったけど、気にしたらダメだ。






2人きりになれるチャンスなんて滅多にないから、これを逃すわけには行かない。



薄暗い理科室につき、思い切って聞いてみた。






『在原くん、モテるよね』




守｢えっと…どうしたの？急に｣




『でも彼女いないよね』




守｢うん、いないよ｣




『好きな人とか、いないの？』




守｢好きな、人…｣






そう呟いた在原くんの頬はほんのりピンク色に染まっていて、いるんだろうなと確信した。





『…いるんだ』




守｢そう、だね｣




『どんな人か、聞いてもいい？』




ここまで聞くのは流石にどうかと、自分でも思った。


でも、気になって仕方が無い。





守｢…優しくて、気遣いができて、明るくて、可愛くて、すごく素敵な子だよ｣








…なんだ、その子にベタ惚れじゃん。


だから気づかないんだ。


私の想いはずっと届かない。







『…そっか！恋、叶うといいね！』







これ以上は聞きたくなくて、無理やり笑顔を作ってその場を離れようとする。









でも、在原くんに手首を掴まれてそれは出来なかった。








『離して…！』





守｢ごめん、ちょっとからかいすぎたね｣





からかいすぎた…？






守｢俺の好きな人は、Aだよ｣





『え、』





Aって、私？







守｢君が俺に好意を持ってくれてたのも知ってたんだけど、毎日話しかけてくれるのが可愛くて｣







“ごめんね？”




そう言って眉を下げて微笑む在原くん。






色々思考が追いつかないけど




とりあえず、すっごく嬉しい。









『馬鹿…!!』






在原くんの胸に飛び込めばぎゅっと抱きしめ返してくれる。









『だいすき』





守｢…うん、俺も｣









薄暗い理科室。




2人の想いが重なった。

泣かないで / 宗像廉→←作者より(必読)

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