伝えさせて Yb ページ9
話がある、そう言われて呼び出されたのは
人気のない楽屋。
仕事の悩みだろうか。最近忙しいからな…
俺で良ければ話を聞こうと、二つ返事で承諾すると
伊野尾はほっとしたような、引き締まったような
不思議な表情をしていた。
踏み入れた部屋は、静寂と独特の空気に包まれていて
「あの日から…」
伊野尾は潤んだ瞳で、俺を捉え
顔も耳も真っ赤で。
「…やぶのことが、好き」
予想外の言葉といきなりの爆弾発言に硬直した。
わけも分からず固まっていると
ふと、真剣な顔になって
「勝手なのはわかるんだけど…ね、
諦めたくて、言っただけだから
返事もいらない!忘れて!」
さっと走り去っていく背中を止めることも出来ない。
ぼーっと眺めながら思う。
俺が?どこが?どうして?
悶々と考えていると、スマホが震えた
「言い忘れた。
今後は普段通りで!びっくりさせてごめん。」
伊野尾からのメッセージで1人つぶやく
「普段通りなんか出来るはずないだろ、」
誰も聞いてない、人気のない楽屋。
この嘘みたいに静かな空気に飲み込まれていった。
でも、それからも大きな変化はなかったと思う。
あるとしたら少し、距離が出来たくらいだ。
「…おはよ」
小さく挨拶をすれば、しどろもどろになりながら
小さく返ってくる。
会話をすれば
目も合わせずに、もじもじと小声で返事が返ってくる。
小動物みたいにびくびくするのは、少し可愛かった。
でも、不自然な距離にメンバーも疑問を抱いていて
そろそろしっかり話をしようかと思っていた。
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作者名:しゃん。 | 作成日時:2018年3月28日 23時