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何があったかわからない。
目の前には白い天井。
楽屋、だと思う
けど周りにいつもの騒がしい声はない。
きっと振り付けは最後までできなかったはずだ。
俺一人のために楽屋を貸し切るなんてもったいない。
ただのスマホの使いすぎで寝不足なんてくだらないな。
迷惑をかけるのは、もうしないと決めたはずだったのに。
「おはよ、ちゃん。」
誰もいないはずと、静かに涙を流そうと
していたのに、大ちゃんがいるなんて気づかなかった
「寝坊、寝不足、貧血、脱水症状、しかも風邪
どんだけ自分を管理できないわけ。」
いつもの可愛らしい笑顔と元気な声とは違う、
イラついたような顔と低い声で
怒ってる。俺のせいで振り付けできなくて
俺のせいで、看病なんかさせられて。
「ごめっ…「まだ起きんな」」
謝りながら起き上がろうとしたら
さっきのように声が低く、でも
心配してくれているように眉を下げている顔があって。
「自分のことあとに回しすぎ
自分だけで責任負いすぎ。だれも伊野ちゃんを
責めてないから。
だから寝とけ」
何だかいつもと違くて
話しかけられなくて、気まずい沈黙が流れた
「…水でも飲む?」
「あ、うん。ありがと」
そう言いながら、大ちゃんは水を自分で飲んだ
「…え、と。……ぅん、ふぁ…だい、ちゃ…」
え。え?口移しってやつ、?
何で俺、大ちゃんと…
「そんなうるうるな目でこっち見んな。
…抑えんのどんだけ大変だと思ってんの。」
抑えるの…、大変…
「……おかわり、ください。
俺も、大ちゃんのこと、す…」
生暖かい水が、熱い唇の間から
とろとろと流れてくる
「好きだよ、伊野ちゃん。」
おかわり、ください Ar …fin
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作者名:しゃん。 | 作成日時:2018年3月28日 23時