青さんの短編集 jump × in (ページ17)

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撮影場所への移動の時、ごめんね、と謝られた。
｢全然気にしてないよ｣
心の広い、良い恋人を演じるのにも慣れた。

言いたい。気持ちを伝えてしまいたい。
｢俺は山田と過ごしたいよ！｣って言ってしまいたい。

密着のする撮影も、今日はドキドキしない。
笑顔も、自分でわかるほどぎこちない。

心配したようにこちらを見る目は
綺麗で、大好きなはずだけど、
今日はごめん。その汚れのない瞳を見つめ返すことはできない。

…最悪な恋人だ。

撮影が終わり帰るとき
トイレを理由に一緒に帰ることを避けた。

楽屋に戻れば、また知念と話してる。

無言で立ち去るのは感じ悪いだろうから
じゃあねってみんなに手を振る。

次の撮影はいつだろう。
次に起きている山田を見るのはいつだろう。

仕事の時間が合わなくて
寝ている山田を見てから仕事へ向かう毎日から、少しずつ遠ざかっている。

毎日ホテルの天井を見て目覚めるたびに惨めで泣きそうになる。

そんな毎日はいつまで続くのかな。

ピロン、ピロン、ピロン

何度も鳴る通知。

｢怒ってる？｣｢大丈夫？｣｢ごめんね｣｢今度は一緒に帰ろう｣｢ごめんね｣｢ごめんね｣

愛おしいよ、すごく嬉しい。
でも、ごめんってまた謝らせて。

｢寂しい｣

また、彼を困らせた。

マネージャーさんに送ってもらうため
山田から送られてきたホテルの情報を見ようとした。

その瞬間、後ろから誰かに抱きしめられて
小さく耳元で囁かれた2文字に
うるさいほど心臓が高鳴る。

｢…や、まだ。｣

知念は？聞き取れないほど小さな声だったと思う。
驚きとドキドキで声が出なくて。

｢断ったよ。可愛い恋人が寂しそうだったから。｣

か、可愛い恋人。
俺を理由に断るなんて…

突然解放されたと思ったら手を引かれて
出口へ向かう。

｢どこに行くの？｣

するとスマホを指さして｢見て｣と言う。

表示された画面には

｢ら、…ぶ……ほて、る…？」

にっこりと笑う君。

甘い甘い笑顔。

嫉妬は苦いけど彼からしたら甘いのかな？

男らしい目付きに、目が離せない。

苦い甘い甘い Ym …fin