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「たかぎ!たーかーぎー!」
昔は気になっていた、たか"ぎ" も
今ではすっかり慣れてしまっている。
「そろそろメイクだから
寝起きで行くと怒られるよ」
「あ、ありがと…」
小さかったから聞こえなかったかもしれない。
もう既に有岡くんの所へ言ったから
改めていう必要はないのかもしれない。
…ほら、寝起きだから声出ないのは仕方ない。
言い訳、言い訳、言い訳。
いつの間にか彼を見つめていたのか
彼がこちらを振り返って言った。
「俺もメイクだから行こうか。」
俺のあとだからまだ行かなくていいんじゃない?とは聞けない。
なぜか一緒に行きたくなった。
他愛のない話。
特に伝えるべき言葉などはないはずなのに
喉は何かを吐き出そうと必死になっている。
「…伊野尾くん。」
ん?と振り向く彼が愛おしい。
…愛おしい?
俺が伊野尾くんを…愛おしいと感じる?
むかむか、いらいらする。
なのにふわふわして力が入らなくて。
ふわり
何かが背中を押した。前に進め、伝えろ、と。
何を伝えればいいんだろう。
今の、感情を?この感情の名前を?
これを伝えれば前に進めるのだろうか。
「好き、です。」
固まっていた彼の顔が
ふにゃりと穏やかになり、紅潮する。
目が、頬が、耳が、
これが運命と言うならば納得する。
運命には逆らえない。
自覚がなくても心は気づいてた。
そしてずっと叫んでた。
君が好きだ
運命のいと Tk …fin
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作者名:しゃん。 | 作成日時:2018年3月28日 23時