ひみつごと (ページ4)

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喫煙者《弟氏×おつ氏》ページ4

''非喫煙者もいるんだぞ、愚弟よ''
そう言われ、泣く泣くリビングルームを兄者に明け渡し、ベランダへと出る。

ひゅう、と鳴る北風は俺の頬を掠めて通り過ぎていく。ハイネックも着て顔以外ほとんど完全防備だと言うのに、全身がぶるぶると震えた。
オマケに今は夕日が沈む最中だ。
これから夜になるにつれ、もっと気温が下がることは容易く想像ができた。

赤い箱から煙草を1本取り出し、それをくわえる。ジッポに手をかけると、夕日と同化した炎がゆらゆらと動き、煙草の先に灯火をつける。
その時、後ろの引き戸がカラカラと軽快な音を立てて髪を下ろしたおついちさんが現れた。

「兄者くんは寒がりだねぇ」

おついちさんも閉め出されたようだ、やれやれといった表情を浮かべ苦笑いしている。
胸ポケットから緑色の箱を出すと、中から細めの煙草が顔を覗かせる。こんなのでも、かなり苦いという…おついちさんらしい煙草だ。

「…あら、あららら！家にライター忘れたよー。弟者くん、申し訳ないけど火、貸してくれない？」

わたわたとありとあらゆるポケットを探すおついちさんだったが、どうやらここにはないらしく、申し訳なさそうな顔をして頼み込んできた。
仕方ないなぁ、しまっていたジッポをまた取り出し着火を試みる。

しかし、何故か左手で待ったをかけられた。
意図が掴めず頭の上に？マークを浮かべる。
すると右手で後頭部を掴まれ、ぐいっと顔を引き寄せられた。

見事に端正な顔立ちにドキッとする。
よく見るとまつ毛も長く、髪も下ろしている為女性に見えてしまうほどだった。

ジジ、とおついちさんの煙草と俺の煙草の先端が触れ火が灯った。

「…ん、着いた。あれぇ弟者くん、顔真っ赤だよぉ??」

「ばっ…！」

夕日のせいだ、なんて言えないぐらい紅潮しているのだろう俺の顔は。
いや、言ったとしてもどうせ嘘だって見抜かれるに違いない。
…悔しい。

「おついちさん」

「なぁに…ん…っ」

自分の煙草の味より先に俺の方を味わってくれ、俺は唇を重ね無理やり舌をねじ入れる。

「っぷは！い、きなりだなぁ君は…！」

先の余裕のある笑みは何処へやら、立場がまるっきり正反対となってしまっている。
もう陽は完全に沈み、リビングルームから漏れている光がおついちさんの真っ赤な顔を照らした。

「ホント、調子いいんだから」

「先に仕掛けたのはおついちさんでしょ」

満更でもない顔をしているように見えたのは、きっと気のせいじゃない。