◉ごほうび ページ11
◇◇◇
深澤「はーい好きなの選んで〜」
福岡のドーム公演が終わった次の日、私達は新大阪行きの新幹線のりばにいた。
ドラマ、歌舞伎、ミュージカル…色々頑張ったごほうびをふっかさんが用意してくれて、大阪観光とテーマパークに行く。
テーマパークはロケで行ったばっかりだけど、あの時はほとんど何もできなかったから今回は楽しむ。
佐久間「Aから引きなー」
阿部「今回の主役。」
丁度スケジュールが空いていた佐久間くんと阿部ちゃんも一緒。
「じゃあ、これ。」
座席の数字が見えないように裏返した切符を1人ずつ選んで新幹線に乗り込んだ。
9D...9D…
座席番号を見ながら自分の席を目指す。
「あった。」
阿部「A9D？」
「うん。」
阿部「じゃあ、隣だ。よろしく。」
「よ、よろしく。」
まさかの隣は阿部ちゃんだった。
阿部「荷物、上に乗せるよ。貸して？」
「あ、ありがとう。」
一気に心臓がドキドキしだす。私、大阪まで生きてるかな…そんな事を思いながら座席に座った。
阿部「楽しみだね。」
「うん。」
話を続けることができなくて、窓の外を見る。すると、昨日の疲れが残っているのかすぐに瞼が重たくなってきた。
阿部「着くまで寝な？」
「ん」
阿部「おやすみ。」
返せてるのかもわからない返事をすると落ち着く匂いに包まれ…私は眠りに落ちた。
阿部「A〜起きて〜」
名前を呼ばれ、落ちていた意識が戻って来る。
「んぅ〜」
阿部「おはよう。もうすぐ新大阪だよ。」
「ありがとう…あ、」
寝落ちる寸前に包まれた落ち着く匂い。その正体は阿部ちゃんの上着。
「あ、ありがとう。」
阿部「どういたしまして。」
一気に上がる心拍数をなんとか抑えて返す。
これまで避けてきた上に、こんなしどろもどろな話し方をする私に阿部ちゃんはいつもと変わらない態度で話しかけてくれる。罪悪感を抱きつつも何も聞いてこない阿部ちゃんに甘えることにした。
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作者名：雪 | 作成日時：2024年3月17日 7時
