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4話 ページ10

〜幸side〜


先程、麓の家を出て半刻程山を登った
ここはとても空気が薄く肺が凍りそうな冷たさだ足もふらつくし目眩がする、この山を登って一体何を試すのだろう

暫く歩いて鱗滝さんが立ち止まる

鱗「ここから夜明けまでに麓の家までおりてこい、夜明けまでに戻って来れなければお前を親族の元へ送り届ける」
そう言って霧の向こうへ行ってしまった、どうしようずっと鱗滝さんの後を着いて歩いて、考え事しかしなかった、道なんて覚えていない

私は犬の様に鼻や耳が良いわけではないし体力はあるが人並みを少し超える程しかも今は足元がふらつく程の酸欠で自慢できるものと言っても成人男性を少し超える程度の握力だ
握力があっても道を思い出せる訳では無い
どうする亜村幸、鱗滝さんはもう見えないとりあえず出来る限り真っ直ぐ下ろう…

┈┈

『はあっ…ゲホッ……はっ…はあっ』

山を下り始めてどれ程経っただろう、歩くだけでも辛いのに歩いて下ると夜明けに間に合わない、必死に足を動かし走るけど初めから息が切れてるからたまったもんじゃない
しかもそこら中に張り巡らされた罠に次々と引っ掛かる

あぁお父さんとお母さんに会いたい…兄さんや弟妹達に会いたい…あの日の朝からずっと考えないようにしていたのに何も考えず走ろうと思っても家族の顔がずっとチラつく


今はそんなこと考えて余計な体力を使っている余裕なんてないのに涙が出るけれど走っているから頬ではなく目尻がずっとヒリヒリ痛い

痛い…

息が続かなくて肺が罠で打ち付けられた体が、痛い
けどお父さん達の方が痛かっただろうこの山は暗くて薄気味悪いけど…お母さん達の方が怖かっただろう…


『はあっ…はっ…考えるなッ…今はっ今は夜明けまでにっ下ることだけ…考えろ…グスッ…亜村幸ッ私は幸、亜村家の長女ッ…』

もう、家族のことは考えなかった、いや絶えず父達の顔が頭に浮かぶけれど知らないふりをして必死に走った

走って転んで落とし穴の先の針山に串刺しにされそうになって…丸太に突き飛ばされて竹に捻り打ち上げられて、石を体中打ち付けられてでも必死に走って…

あぁ空が白んできてる間に合わないかもしれない
認められずに家族の敵を打つことも叶わず親族の元へ行かなければならないかもしれない

嫌だ嫌だ…麓の家はどこ?まだつかないの?家はどこ

『!!』

ガラガラッ

家の戸を最後の力を振り絞り引くけれどその先の光景を見る前に目の前が真っ暗になった

5話→←とある育手の独白



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作者名: | 作成日時:2021年11月28日 21時

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