可憐に美しく笑った氷柱 (ページ5)

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2話ページ5

前話続き
〜side幸〜

誰がいったい誰がこんな酷いことをしたんだろうか、家族を殺した者を探して警察に突き出すため、いや私も殺してもらうために探したのかもしれない、犯人を探していた。

もうとっくのとうに逃げたのだろうか、寝室にいない、台所にいない、居間にいない、厠にいない、蔵にもいない、どこだろう、中庭へと出た時だった、バリボリ音がした、息を殺して覗いてみた、母であろう妹であろう遺体を喰っていた……

なんなんだあれはなんだ、人間か化け物ではないか、瞬時にあいつが家族を殺したんだと理解した。
幸か不幸か食べることに夢中で私に気がついていない、家族と共に死ぬために殺してもらおうかと思っていた、でも家族を喰っているところを見た瞬間、私は生まれて初めて激しい怒りを抱いた、この感情を激情と言うらしい、こいつを殺してやろうと思った。

足元にあった私でも持てる1番大きな石を手に取った、家族しか知らないが私は1番上の兄より力があった、父と同じ位の力があった、だから力を振り絞って思いっきり化け物の頭を殴った、化け物はひるんで倒れ込んだ、何も考えずに化け物に股がって頭を殴り続けた、なにかギャーギャー言っていたけど覚えていない。

どのくらい時間が経っただろう、そう思った頃に太陽が登った、人が来たら店の奉公さんたちが来たら、私が人殺しだと間違えられだろうか、そしたら警官に捕まって、裁判を受けて、小さい頃に新聞で見た○○連続殺人事件の犯人のように死刑判決を受けて家族の元へ行けるのだろうか。
そう思ったけど化け物がもがき苦しんで、陽の光で焼け死んだ、消えてなくなった。

その光景に驚きぼーっとしていたら天狗のお面をつけている学生服を着たような雲模様が描かれた羽織を着て帯刀している人が、いつの間にか私の目の前にいた、私に羽織をかぶせてくれて、抱きしめてくれた…。

温かかった、痛かっただろうと、辛かっただろうと、苦しかっただろうと頭を撫でてくれた、父の様だと思った。そこからの記憶はない、気がついたら布団の上で寝ていた、起き上がるとさっきの人がいた、名前を鱗滝さんと言うらしい、事情を説明してくれた、鬼について鬼殺隊について教えてくれた。