稲妻の女神【アレスの天秤】 (ページ10)

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｢ここで泣く！？｣

時と場所は変わって、試合後のトキオサンシャインタワー。
私はとある方と一緒にいるが、そこでわっと泣き出した雷門に突っ込む。

｢はいはいはい、雷門イレブンの皆さん、あなた方のプレーには感動いたしました。
実に素晴らしい。｣

｢え、ちょ、早い…。｣

隣に立っていたその人がいつの間にか雷門に声をかけている。

｢…誰ですか？｣

｢私、アイランド観光の社長、島袋幾太郎と申します。
お見知りおきを。｣

完全に私置いてけぼりなんですけれど。
タブレットを胸に、はぁ、と溜息をつく。
アイランド観光は、雷門のスポンサーを受けてくれるという。
喜ぶ雷門を見ると、少し懐かしいものを感じた。

｢よかったですね、皆さん。｣

島袋さんの後ろからひょこっと顔を出して、彼らに笑いかける。

｢水無瀬さん…！｣

｢水無瀬さんって呼び方、何かやだな…。
苗字呼び捨てか名前で呼んでよ。｣

｢じゃあ…A！｣

呼び方に満足して頷く。
稲森くんが突然、何かに気付いたような声を上げた。
思わずみんな振り向いて何が？と聞く。

｢監督が言った、言葉の意味だよ。｣

“ それはズバリ！負けないことですね！ ”

｢へぇ、あの監督、そんなこと言ってたんだ…。｣

へらへらしてるから意外だ。
経歴も妙だし正直信用に欠ける部分はあるものの、実力は確からしい。

｢…よかったね。｣

タブレットを持つ手にきゅっと力を入れて、雷門イレブンを見渡してからその場を後にした。