監督の指示 ページ18
｢やべ、始まっちゃう！｣
スポンサーのCMも終わって実況がチーム紹介をしている中、とりあえず客席上まで走る。
｢試合前に怪我って...壁山くんらしいけどさ...。｣
試合前日、強化委員として派遣されていた私の同期、壁山塀吾郎はうっかり足首を捻挫したらしい。ねぇ本当に強化委員なの？
客席の1番開けたところからグラウンドを見下ろす。
美濃道山中の選手達は、上から見てても圧がある。グラウンドにいる人達からしたら尚更だろうな。
始まった試合を見ながら、見やすい席を探す。上から見ろという指示を出すなら1席くらい確保しておいてほしい。
｢あ...。｣
ぶらぶら歩きながら席を探していると、見知った顔が視界に飛び込んでくる。
｢...あ？何でここにいんだよ。｣
一応年齢的には先輩の私に向かって喧嘩腰に会話をふっかけてくるやつは、1人しか知らない。というか1人しかいない。
｢それはこっちのセリフだわ。
灰崎くんが他チームの試合に顔出すなんて...明日は雪かな？｣
｢んだと？｣
灰崎くんの眼光に多少びびりながらも、冗談冗談と返す。私一応先輩なんだが。
グラウンドを一瞥して、タブレットを開く。
イレブンバンドと同じ指示内容が、ここには送られてきているはず。
｢守りオンリー...。｣
監督の指示は、守れ、だけ。要するに練習と同じ要領で試合を運べという意味だろう。
眼下に広がるグラウンドを見つめながら、指示内容を自分なりに咀嚼するも、指示の意図はよくわからない。
｢あんた、ここにいていいのかよ。｣
｢あ、そうだ席探してるんだった。｣
灰崎くんに言われて思い出す。
とりあえず歩こう。
｢じゃ、灰崎くん、またね。｣
続く
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作者名：まにゅ | 作成日時：2018年10月27日 17時
