稲妻の女神【アレスの天秤】 (ページ16)

今日:4 hit、昨日:10 hit、合計:19,477 hit

優しさページ16

予想通り、小僧丸くんはサッカー部の練習に姿を見せなくなった。
その間、氷浦くんと岩戸くんは、水撒きと壁拭きのプロになっていたみたいだが。

｢ねぇ、稲森くん、小僧丸くんの様子どう？｣

｢あ、A。
うーん...夕飯の時にも顔出さないから、わからないんだよね...。｣

私は木枯らし荘に住んでいるわけではないので、彼らの私生活は全く未知の世界なのだ。
小僧丸くんの様子を知るには、チームメイトである稲森くん達に聞く以外、知るあてがない。
が、当の本人もよくわからないようなので、彼の気持ち次第だということになる。

｢ねぇA、稲森くんって呼び方、変な感じするから明日人って呼んでよ！｣

｢え？｣

｢みんな、明日人って呼んでるから、稲森くんって呼ばれるのに違和感あってさ...。
同い年だし、チームメイトだし！｣

｢そ、うだね、うん...。
じゃあ、これからは明日人って呼ぶよ。｣

満足そうに頷く稲森く...明日人を見て、私も思わず笑う。

｢そうだ、小僧丸くんのことは、みんなに任せてもいい？｣

私が言ったところで何の効果もなさそうだし、と続けると快諾してくれる。
なんというか、彼らは裏表がない人達だ。
小僧丸くんのことを丸投げにしても、それを嫌な顔ひとつせずに引き受けてくれるのは、彼らが小僧丸くんのことを心の底から信頼していて仲間だと思っているからだろう。

(心配は無用、かな。)

先輩達の代も、私の代も、そして新生雷門イレブンも、そういう心優しい人達ばかりだ。
小僧丸くんも例外ではない。

｢よろしくね。｣

私のことを、雷門という名前に縛られている、と表す人もいないことはないのだが、私が雷門のマネージャーを続ける理由はそうじゃない。
私には、私なりの目的があるんだ。