363話:行ってはいけない ページ4
落ち着いたら食事の支度は出来ているから、
居間に来いと土蜘蛛から声がかかった。
膳があり、羽織がその横に綺麗に畳まれた状態で置かれていた。
土蜘蛛「男物しかなくて申し訳ないが、今日は冷える故着ておくといい。」
貴方「ありがとう…」
土蜘蛛の事だ。出来るだけ女性物に近い着物を選んでくれたのだろう。
緑色の綺麗な着物。
土蜘蛛が着たのを見たことは無いが、一体どうしたのだろう。
貴方「ね、ねぇ…土蜘蛛………」
土蜘蛛「何だ。」
貴方「どうして………」
土蜘蛛「…ん…?」
貴方「どうして林の中で…手を…………」
土蜘蛛「…その事か。わからぬ。カルラの仕業か、それともあの空間の仕業か…。」
貴方「カルラ…私をあの世界に引き込もうとしていたの…。二人でいたいって…。」
土蜘蛛「…」
貴方「だから、今大ガマの屋敷に行ってはいけないんだよね…、土蜘蛛…。」
土蜘蛛「……ああ。」
貴方「…」
土蜘蛛が優しく抱き締めてきた。
いつぶりだろうか、土蜘蛛の温もりを感じたのは。
土蜘蛛「今…カルラの所へは絶対に行ってはならぬ…。それがお主のためだ。」
貴方「わかってる………、わかってるよ…。」
スッと一筋、頬に涙が伝う。
貴方「あ………れ…」
どうして私、泣いているの____?
58人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:暁兔 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月18日 0時