386話:友達 ページ28
ー烏天狗sideー
唐突に告げられたのは、
愛しい人が死んだというものだった。
女郎蜘蛛「鬼の血を体に秘めた者の記憶と引き替えに、大切な想い出を甦らせる。研究結果で、わかったの。それを、Aが受け入れたのよ。」
つまり、若君を甦らせるために
Aが犠牲になった。
簡単に言えばそうなる。
それに、Aならそれを承諾するのは目に見えていた。
烏天狗「どうして止めなかったの…。」
あの最後の笑顔は、
別れる事を、僕達を忘れてしまうことを
わかっていた上で見せたということになる。
烏天狗「止められたはずだよ…、女郎蜘蛛!どうして!!」
女郎蜘蛛「無理だったのよ!」
女郎蜘蛛の声が、牢内に響いた。
女郎蜘蛛「あの子、言ったのよ……。二度と会えなくなるより、記憶がなくなった方が良いって。……そんなの、アタシだって止めたかった…!」
牢の前で泣き崩れる女郎蜘蛛を
誰もそれ以上責めることは出来なかった。
土蜘蛛「手紙を見せろ。女郎蜘蛛…」
震える手で、女郎蜘蛛は土蜘蛛に
Aから預かったという手紙を渡した。
土蜘蛛はそれを素早く開けると、
読み上げた。
次に会った時も
私の“友達”になって欲しい
その言葉を聞いて、みんな泣いた。
何度も聞いた。
何の変哲もない、ただの言葉。
室町の終わりも、戦国の世の終わりも
Aは決まってそう言っていた。
友達になって欲しいと。
それ以外、彼女は何も望まないんだ。
僕達が望む関係は、もう…………。
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作者名:暁兔 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月18日 0時