360話:成長 ページ1
目が重くて、なかなか思うように開けられない。
ここはどこだろう。
私…確かカルラを助けに行って…………。
薄らと開いた目に入ってきたのは
初めて見る光景で、
驚きのあまり声が出なかった。
すぐ側に誰かがいるけど、
その人は私に気付いていない…というか、
この状況に覚えがある。
カルラの過去を知った時、
フミさんを初めて見たあの瞬間と同じ感覚。
また誰かの記憶の中に入り込んでしまった様だ。
貴方「あれ…は…………大ガマ…?いや………大やもり…。」
大やもりがいる。
14歳くらいの女の人と一緒に。
すると、2人は手を取り合ったり
笑いあったりした。
その表情を見ると、
ああ、恋仲なんだな…と思った。
大やもりも、こんなに幸せそうな顔をするんだな。
女郎蜘蛛に引きずられている時には見せない顔。
ううん、大やもりと会ってから
1度も見た事がない表情だ。
貴方「…そう言えば、前に恋仲が居て………って…もしかして…。」
そう、前に大やもり自身が話したこと。
恋仲が居て、その子は母親が居らず
老夫婦に育てられたと。
その子の名前は“桔梗”。
もしかして、と思って
私が二人から見えないのをいい事に
女の顔を覗き込んだ。
その子は、私の面影を持った
私の子供その者だった。
1番見たかった姿。
親として、子供の成長を見ることが出来なかったあの時代。
それを今、見ることが出来た。
涙が沢山溢れてきて、
幸せそうな2人を他所に
私はひたすら声を上げて泣いたのだった。
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作者名:暁兔 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月18日 0時