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２２９話：我儘 ページ6
妖魔界に来て2日目。
瘴気が濃いせいか、現在の妖魔界には
朝が来ない。ずっと暗いままなのだ。
貴方「……」
障子を少し開けて、布団の中から外を見る。
崩壊した建物、黒い空、未だ聞こえる叫び声。
ここは地獄そのものだ。
貴方「エンマさん……。エンマさんと見た景色は、もう2度と見れないのかな……。」
綺麗な月夜を、また見ることは望めないのだろうか。
2人で縁側に座ることも、もう二度と無いのだろうか。
1人で居ると、考えてしまう。
エンマさんに会いたいと。
会って、その顔を見て、
その声で私の名を呼んで欲しい。
その手で私の髪を、頬を優しく撫でて欲しい。
私にとっては数日前の別れなのに、
何故か何年も経っている気がして、
今すぐにでもエンマさんに抱き締めてもらいたいのに。
貴方「私……エンマさんと会って我儘になっちゃったみたい。」
見えない月を探しながら
静かに頬に涙が伝うのは、
今日…何回目なんだろう。
貴方「どこにいるの……。会いたいよ…。」
部屋の外から声がかかったから、
泣くのをやめてその声に応えた。
貴方「はい？」
烏天狗「烏天狗…だけど……入ってもいい？」
貴方「勿論」
烏天狗が来てくれた。お礼もまともに言えてなかったから良い機会だ。
烏天狗は部屋に入るなり、私にこう言った。
「………泣いてたの？」
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年8月25日 14時
