258話:揺れ ページ36
時計を見ると、卯の刻を示していた。
伏せっているだけでは暇なので、
部屋の中に、鬼たちが襲って気た時に、使えそうなものは無いか探した。
桐の箪笥の一番下を開ける。
そこには、エンマさんが昔着ていた
緑色の羽織や、高級そうな白地の着物が入っていた。
貴方「綺麗……。残っていたんだ…。…ん?」
着物をそっと手に取ると、
緑色の羽織の下から、見覚えのある箱を見つけた。
貴方「これ…!」
見間違えるはずがない。
だって、それは私がずっと持っていたものだったから。
箱を躊躇なく開けると、
そこには橙色の簪が、あの日のまま
綺麗に入っていた。
貴方「エンマさん……、持っていてくれたんだね…。」
その簪を握りしめて、
目を閉じた。
その幸せな気持ちも束の間だった。
急に、ガガガガッという大きな音が鳴ったかと思うと、地面が揺れだした。
貴方「えっ…?何…!?」
他のみんなが心配になり、部屋の中央まで移動した。
もう少しで隣の部屋へ繋がる扉に着く。
しかし、揺れは強まる一方で、
すぐにその場から動けなくなってしまった。
扉は、向こう側からガンッと音が響いている。
誰かが開けようとしてくれているのか。
揺れで扉の形が変形して、開く様子もない。
さっきいた場所には、桐の箪笥が無残にも倒れていた。
あそこに居たら、きっと下敷きになっていただろう。
暫くすると、揺れはおさまった。
けれど、これは単なる地震では無さそうだ。
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月25日 14時