231話:奪う ページ8
ー烏天狗sideー
烏天狗「A……ごめん、不謹慎だけど……
今の君は…凄く綺麗だ。」
貴方「え………?」
自分でも馬鹿な事を言ってるって分かっている。
それ以上に、彼女が若君しか見ていない事も、彼女の目に自分が写っていても、心まで奪う事が出来ないのも。
全部わかってて、こんな事を言う自分はおかしいのかな。
若君には適わないよ。
強くて、優しくて、そして何より
Aを愛していたんだ。
それを間近で僕は見ていた。
Aも若君を好いていた。
この二人の間に割り込める隙など有りはしなかった。
でも僕は……初恋を諦める事が出来なかった。
昔も、そして今も。
貴方「烏天狗………?」
外は暗くて、部屋の片隅にある蝋燭が
灯りの代わり。
ほんのり赤く染まる頬。
不安げに見つめてくる視線。
僕の名前を呼ぶその声。
艶やかな髪や、細く白い手も、
会った時から変わらない、凛々しい性格も。
全部、大好きなんだよ。
だから、卑怯と思われようと構わない。
若君が居ないなら、僕がもらう。
他の誰にも譲らない。
背中の傷のせいであまり身動きの取れない彼女を優しく引き寄せてから、
僕はAの唇を奪った。
ほんのり赤かった頬が、更に紅潮して
離れた口から漏れる吐息も
涙で潤む瞳も
蝋燭1つの薄暗い部屋で見える彼女は
美女と謳われた室町時代後期から変わらず、
本当に美しかった。
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月25日 14時