＊頭痛 ページ35
ブジュッ
血管の千切れるような音が、トントンの耳に聞こえた。
A「へぇ、マジで治っちゃうんだな。」
ボタボタと流れ落ちる赤など全く気にせずに、その白い皮膚が塞がりゆく様に心から感嘆の声を漏らす彼にハッと我に返ったトントンは、Aの手首を掴み叫んだ。
トン「何やっとん！！！」
A「わッ、え、何って…」
目を見開き、頭上に疑問符を沢山浮かべる彼はあの頃と変わりないのに。なのに、これ程までに違うとは。
彼は痛みを伴う事が嫌いだった。それでも指示されれば傷つく事の多い最前線にだって行くし、味方の盾になる事だって厭わない。誰よりも苦痛を味わってきた彼が、自ら進んで自傷するなんて以ての他だ。
今、目の前にいる彼は本当にAなのだろうか。
グル「トン氏。」
背後から肩を叩かれ、少し強く握りすぎてしまったAの腕を離す。
トン「グルさん…」
グル「Aもだ。」
A「…」
真剣な眼差しでAの瞳を覗き込むと、彼はしっかりとした声で言った。
グル「自分の身体だ。もっと大事にしろ。お前を1番大切にしてやれるのはお前自身なんだぞ。」
A「………俺自身、ねぇ。」
最早跡形もなく元通りになってしまった手首をじっと見つめながら、Aは総統室から出て行ってしまう。それを追いかけようとしたが、グルッペンに制止された。何でと言いかけて口を噤む。何故なら、彼の血の色をした深紅の瞳が、とても悲しそうな光を湛えて見えたからだ。何も言えなくなってしまったトントンに彼は言う。
グル「大丈夫だ。幾ら記憶を失くしたってアイツの根本的な部分は変わらんさ。それに、記憶を失くさせたままにしようと決めたのは他でもない俺たちだろう？」
その言葉に、ゆっくりと頷きながらトントンはAの出て行ったドアを眺めた。
＊
A「…俺なんて、知らねぇよ……。」
ドアを出てすぐの廊下で、Aはズルズルとしゃがみ込み、膝を抱えて吐き捨てるように呟いた。
俺ってなんなの？何が俺なの？わからない。思い出せない。どうしたらいい。どうしたら…
A「うッ！ぃ、…っ」
ズキリ
『おはよう、トンさん』
頭が、痛い
『ひゃっ！ゾム！？ビックリしたわ！』
痛い
『二人のおかげで青緑色が好きになっちゃったよ』
痛い痛い痛い
『わすれるのか』
A「わす、れたく、ない」
その言葉を最後に、嘘のように頭痛が治まっていった。ふらつく足で立ち上がりながら考える。あれはきっと…
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←＊改めて
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天の声 - 終わった…の…か？…(¬_¬) (2019年3月8日 0時) (
レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
Karasu - 終わり…ですか？？ (2019年1月6日 18時) (レス) id: ce467b078d (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ - 初コメ失礼します！高機能のうさぎ……天国編に出てきたうさぎかと思いましたw (2018年3月1日 21時) (レス) id: 0e94862c9b (このIDを非表示/違反報告)
てっさん(プロフ) - イメ画とても素敵です…色合いから何から何までどストライクで好きです…初コメ失礼致しましたっ (2018年1月17日 0時) (レス) id: c960d35a04 (このIDを非表示/違反報告)
サクヤ(プロフ) - ninaさん» そう言って頂けて嬉しいです！！ありがとうございます！！ (2018年1月15日 20時) (レス) id: f3b38bb195 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サクヤ | 作成日時：2017年12月23日 8時
