プロローグ IV ページ6
ＮＯside
地面に、彼の手が落ちた。
固く閉じられた彼の頬に誰かの水滴が落ちる。
「あああああああああああああああああああああああああっっっっっ！！！！！」
大声。泣き声が混じる。空気が振動した。
その場にいた誰もが、その声を聞いた。
オールマイトの個性の秘密を知る人物。
オールマイトが本気でやり合える人物。
全世界の誰もがが尊敬する
そんなヒーローが、この世から消えた。
［『終わってないぞ。オールマイト！！』］
泣き叫ぶ男の耳にはそんな声が届いた気がした。
「……！！はい！」
そうしてオールマイトは被害者がいる方へと足を伸ばす。
「大規模災害発生！！
重軽傷者多数！死亡者1名！
グラビティヒーロー アイリス死亡！！」
このニュースはたちまち全世界に拡がり悲しませた。
その中のある生徒は
「……嘘だろ……？先生？なぁ、」
縋るように電話をかけるその生徒。
無常にも聞こえてくるのは彼が自身で録音した留守番電話の声。
「っせんせいっ……！！」
何時もなら仕事中でも彼は出る。
それを知っている彼はニュースで報道されていることが本当だと理解してしまった。
携帯を抱きしめ膝から崩れ落ちた。
泣き叫ぶ咆哮が部屋に響き渡った。
……またある生徒は
「オーマイガー…………嘘だと言ってくれよ……
センセー。」
口調はいつもの。
ただ声色は沈み、彼は自身の手を強く握っていた。
ポタッ
手に爪が刺さり血がフローリングに落ちた。
彼の葬式には多くの人が参列した。
ファンも大勢押しかけ交通麻痺が起きるほど。
彼等が入ることは叶わず後にお別れ会が開かれたが。
葬式にはもちろんオールマイトや他のプロヒーロー、彼の教え子達がいた。
皆が泣いていた。
俯いていた。
メディアは…来たがバッシングを受け、帰って行った。
見送りが終わって、皆が俯きながら帰宅を始めた頃。
1人の生徒が声を荒らげた。
オールマイトを見つけたからだ。
「なんで！！！なんで！！！先生が死なないといけなかったんだ！！！！！」
憔悴しきった青年はオールマイトに叫ぶ。
「消太！！やめろ！」
青年、相澤消太はアイリスの教え子だ。
手に包帯を巻いた青年がそれを止める。
ぞろぞろと相澤を止めようと級友が集まる。
オールマイトは頭を下げて言った。
「済まなかった。」と。
そして彼らに伝えるのだ。
プロヒーロー アイリス
いや
…重緑Aが
この世に残した生徒への言葉を。
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作者名：成瀬華夜 | 作成日時：2022年4月8日 0時
