拾ノ話【お館様 弐】 ページ10
そしてまた話を続けた。
守れなかった家の娘一人が鬼に変貌していたこと。その兄が水柱 冨岡 義勇とAを欺いたこと。
鬼となった少女は自分も飢餓状態の筈なのに兄を庇い、冨岡を威嚇するように体制を取ったこと。
それを踏まえた上で自身の決意を話す。
目には強い光が宿っていた。
『隊律違反なのは存じております。
が、あの二人は何かが違う気がしたのです。
そしてもしその鬼の少女…
竈門 禰豆子が誰かを喰った時には
私、朝柱 朝時 A
共に見逃した
水柱 冨岡義勇 共々自害します。』
人の為に命を懸ける。
簡単に言えるけれど難しい事だ。
命は一つしかない。
失ってしまえば二度と元には戻らない。
それだけ
この先の未来を平和にする為に。
言葉では言い表せない感動がお館様を震わせた。
微笑んでゆっくりと頭を下げる。
「A。君は凄い子だ。ありがとう。」
目を見開くA。反射で手が前に出てしまうほどに驚いている。
『?!頭をお挙げ下さい!私は何も!!』
「いいや、君のおかげで何千人もの命が助かっているんだ。何時も、有難うね。」
そう。Aが救った人の数は何千人という数。
それだけ多くの任務に赴き、人を守り、夜のように真っ暗だった道を朝日のような光で照らした。
隊士の中にもAを尊敬している者は沢山いる。誰にでも優しいAはみんなの心の支えなんだね。とお館様は考えた。
ゆっくりと顔を上げると、お館様とAの目が合う。
視力も殆どないようなお館様の目でもわかるくらい、Aは澄んだ瞳をしていた。
『……いえ。』
Aはふわりと微笑んだ この一時の幸せを噛み締めずにはいられない。
ヒュウと通り抜けて言った風は冬なのに少しだけ、暖かった気がした。
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紗那(プロフ) - 初めまして、面白くて好きなったんですが、本来なら続くと表示されているのに最後終わりとなっています。この先は続かないんですか? (2021年11月17日 17時) (レス) id: 651dd4d3c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:成瀬華夜 | 作成日時:2021年3月14日 7時