朝の炎に包まれて【煉獄杏寿郎】【男主】 (ページ14)

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拾肆ノ話【名前呼び】ページ14

暫くして。

「それにしても朝時さんは何故俺の事をさんけで呼ぶのだ？！！！」

彼は追加で甘味を頼もうと品書きを眺めつつ、迫力満点で言ってきた。

フワフワと彼の黄色い髪の毛が揺れている。
この上ない幸せだな。
うーん。名前で呼ばない理由…。か

慕っていて呼び捨ては何か違うし名前で呼べば、どうにかなってしまいそうだったから。まぁそんなこと本人に言える筈も無く

『………何となく？』

と返してしまった。

だが彼は全く持って納得していないようで。
品書きを渡されつつまた大声で言う。

「君は俺より先に柱になっていただろう！
これでは示しがつかない！」

相変わらず良い声をしているな。
なんて呑気に考えている自分がいる。

『そうだな…でもまぁいいんじゃないか？
君の父上を煉獄さんと呼んでいたからその癖が抜け出ないんだ。』

俺は追加でスヰートポテトというものを頼んだ。ついでに桜餅を…二十個ほど。
彼もまだまだ食べるようだ。

「そうか！君が柱になった時はまだ父上が柱の時か！」
『嗚呼…かなり、世話になった。』

あの人は、柱になり右も左も分からない状態だった俺を気遣ってくれた。

だから柱を辞めるとなった時は心底驚いたものだ。この煉獄さんの優しさは、彼の父や母から貰ったものなのだろう。彼の母瑠火さんについては彼の父、煉獄愼寿郎さんから聞いた。とても正義感の強い優しい人だと知っている。

ヒュウっと風が通りすぎる。

しんみりとしてしまった…。
どう話をしようか迷っていると、彼はあまり気にしない様子で脱線から話を戻した。

「と、話がずれたな！君の方が早く柱になっていただろう！」『いやそうだけどもだな？』

…これで話が進まない。
あそうだ。と思いついた案を話す。

『それじゃぁこうしよう。
俺は君のことを杏寿郎と呼ぶ。
だから君も俺の事をAと呼んでくれ。』

これは下心…なにか罪悪感が湧いてくる。
嗚呼…浅ましいな自分は。
そう考えても言ってしまったものは仕方ない

「む！わかった！ではよろしく頼む！A！」『言い直す必要はあったのか？…よろしく杏寿郎』

…名前呼びは業が深い。

とくんと言った、胸の高まりを聞かなかったことにして俺は届いた団子を頬張った。