ままごと。3

105 行人side ページ7

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東京で仕事を始めて、何年経っただろう。

満員電車も、一人暮らしも、慣れすぎてしまった。





『 実家へ帰る 』と言うより、

『 実家に行く 』の言葉の方が、今の俺には

しっくりくる。



そこそこ大きな芸能事務所。

そこに所属するベテラン俳優が、俺の担当する人。



現場への送り迎え、同行は勿論。

プライベートもサポートする。



それに加えて、

台本への書き込み、役作りの為の資料探し等の事務仕事。

ミーティングと、毎日時間に追われている。



この仕事に、定時、なんてほぼ存在しない。

事務所に来て、次の日の明け方に帰ることもあれば、

来てたったの30分で今日は帰っても大丈夫、なんて事もたまにだけどある。







『 行人 。 お前明日から2日、休みをとれ。

その疲れた顔、リフレッシュしてこい。 』






｢ いや、休みを取れるほど暇じゃないでしょう。

舞台も控えてますし。大丈夫です。 ｣





『 最近よく電話してるよな。

彼女でも出来たんだろ。

デートくらいしてやらないと、すぐ振られちまうぞ。 』




｢ いや、彼女でもなんでもないですよ。 ｣





『 良く言う。

しょっちゅうスマホばかり気にかけてるくせに。』





｢ 本当に違いますって。 ｣



俺のスマホの着信履歴には、

見慣れない名前がよく並ぶようになっていた。


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