ままごと。

23 翔side ページ23

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目黒川の桜が満開に近づいた、ある春の日のドラマ撮影日。


共演者である俳優さんのマネージャーが体調を崩し、
「 撮影に遅れるかもしれない 」という連絡を受けた。


『 では、青柳を乗せて、そちらの事務所を経由して撮影場所に向かうようにします。 』


マネージャーの電話を後部座席から聞き、

何となく理解した俺は、身なりを整えた。



芸能界では俺なんかよりもずっと先輩の俳優さん。

車で横柄に待ってるなんて失礼があってはいけないと、俺も一緒に事務所の中へとついて行った。




『 お世話になります。すぐ参りますので。 』


受付でそう言われて、少し経つと。


女の子と話しながらやって来た先輩俳優さん。



『 失礼します。 』

そう言うと、こちらにも会釈をし、女の子は事務所から出て行った。



聞けば、体調を崩したマネージャーさんの妹さんで、用事で近くまで来たついでに、お土産を持ちながら挨拶に来たと言う。





一目惚れなんて、自分には縁のないものだと思っていた。




だけど気付けば、会釈を交わしただけの女の子が頭から離れなくなっていた。



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それから数日後。


お詫びも兼ねて、と、その先輩俳優さんとマネージャーさんを交えての食事会に誘われた。

久々のオフで、好きな釣りの予定が入っていたけれど。

少しでもあの子の事が分かるかもしれない。

そう思えば、予定のキャンセルも苦にはならなかった。




老舗の料亭での食事会。



自己紹介や挨拶を終えて、楽しそうに話す先輩俳優さんと、俺のマネージャー。


俺も、ここぞとばかりに行人さんに話し掛けた。


『 妹さんがいらっしゃるんですよね。

先日少しお見かけしました。 』


最初はそんな切り出しだった気がする。



そこから話に花が咲き、

あの女の子の名前が、Aだという事。

子供が1人いる事。

未婚のシングルマザーである事を知った。




『 実は、LDHさんの事務募集に履歴書を出させてもらおうと思ってるんです。 』




運命だと思った。


このチャンスを、逃したくないと思った。




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