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『くす、り…』
″くすり″
その単語だけで、
不穏な考えだけがよぎる。
「…クスリ」
繰り返すように、呟く。
卓さん俺も黙ったまま。
『…今、警察の人がきて、
話聞かれて、
家内捜査されて、
お父さんは、離婚するって言ったっきりでっ、
…もう、どうしたらいいかわかんなくて…!』
「っ、…!」
思わず、佐々木を抱きしめた。
もう言わんくてええから、
もう、抱え込まんでええから、
俺はお前の気持ちを担うことなんて
できないけど、
せめて、半分でも分かってやりたい。
「…辛かったなぁ、」
『……せんせ、…』
そっと頭を撫でる。
『…せんせ、こんな生徒でっ、ごめん…っ』
「なんでお前が謝んねん
…俺はめんどくさいなんて思ってへんよ、
…きっとこれからも思うことはない」
いつもより小さな背中を抱きしめる。
きっと、
その傷は生涯消えることは無い。
だけど、せめてこれだけは憶えていて欲しい。
「お前には、友達も、俺も、卓さんも
みんながついとるから
お前の味方やから」
『…っ、うん、っ』
「…佐々木は笑ってる方がよか」
そう言って卓さんは微笑み、
佐々木の頭をぐしゃぐしゃ、と撫でた。
『なか、しま先生、っ、…』
(解れた糸が、ひとつ増えた)
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作者名:めい | 作成日時:2017年12月16日 15時