偽装恋愛【nrs】 (ページ5)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:9,188 hit

05 ページ5

次の日。
なるべくそらるくんと話さないようにしよう、と心に決めたのに課長にこのプリント一ノ瀬くんに届けてくれる？と無理矢理資料を押し付けられたものだから、仕方なくコーヒー注いでるそらるくんの所へ重い足取りで歩いていく。

細すぎて折れちゃいそうな体と外出てんのかと疑うほど真っ白な雪色肌が見えて、余計気まずくなってくる。電話とかだったら話しやすいのになんで資料届けなきゃならないんだ、クソ。

『そら、一ノ瀬くんこのプリント課長からで、今週の金曜日までに仕上げてくれだそうです。』
「え"、無理なんだけど」
『私に言われてもみたいなところあります。それでは、これで……』
「待って。言いたいことある」
『……』

これってもしかしなくても付き合った報告とかされるのかな。
嫌だな。なんだか。

どんな反応していいのか分からないもん。そらるくんのことが好きとか、そういうのは関係なくてただ純粋に。

「そらるさん、どーしたの？」
私が唇を噛んで俯いているとき、気楽そうな声がしてガバッと上を向けばいつも通りのぱっちり二重で可愛らしいお顔したなるせくんがコーヒーコップ持ちながらこっち見てる。

途端に、安心と嬉しさが増す。

なるせくんとは昨日話したとき以外には親友の水瀬晶ちゃん通してやっと話せるくらいだったから、そんなに一緒にいないのに。なんでだろ、居心地が一気によくなった。

「なるせ、職場ではその名前で呼ぶなって言ってるのに何回言ったら分かるんだよ」
「えぇ、たまにそらるって呼び捨てで呼ぶくらいなんだからそんなこと言わないでくださいよぉ」
「うるさいうるさい」

そういえば2人とも仲良かったな。まふくんがちがう部だから元々知り合いの人そらるくんからしたらなるせくんくらいだもの。付き合いも長いはず。

いいなぁ、こういう口喧嘩？まではいかないけど、そういうのってほんとに仲良い人としかできないから羨ましい。

信頼関係があってのもの、ってすごく価値があると思う。

「なるせにも言いたいんだけどねー、」
「うん」

そらるくんには見えないように、それでも安心させてくれようとしているのか、そっと私の手を握って背中を擦る。

「俺、美佐と付き合うことになったから把握よろしく」
「おけおけ、任せろ。爆ぜろリア充」
『お、おめでと』

言えた。おめでとうって言えたよ。

そらるくんがなるせくんに何だよそれ、って言ったあとに私にありがとうって微笑む。