寄せ集め。 (ページ8)

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彼、もとい井上瑞稀くんはうちの高校の生徒会長。

わたしが出会ったのは中学校の入学式だった。

とんでもないイケメンがいる、と初っ端から女の子たちのトークテーマをかっさらった瑞稀くんと橋本くんは、そういう話に興味のなかったわたしの耳にすら届くほどの存在で。

だけどその時はさほど意識していなかった。

はしみずどっち派？という問いに橋本派と答えてしまう程に。

だって当時、思いっきり着崩した制服を纏って先輩たちに笑顔を振りまく橋本くんはやっぱり圧倒的に目立っていたし、なんなら瑞稀くんはそのおまけだった。

あれ幼なじみくんも顔かわいいじゃーん！ぐらいの。

そして次の年のクラス替え。

橋本くんは5組、わたしは3組。

同じ教室にいた瑞稀くんはクラスの学級委員としてしっかり者ポジションをキープしつつ、仲がいい男の子たちには
なかなかの毒舌を発揮する姿が見ていて面白かった。

先生にも気に入られていたし、他のクラスからもしょっちゅう瑞稀ー！なんて呼ぶ声が聞こえる。

昼休みはサッカーだのバスケだので汗を流して、シャツの袖を捲って帰ってくる彼は本人の気付かない内に結構な歓声を浴びていた。

身長がぐんぐんと伸びだしたのもこの頃だったと思う。

教壇に立ってすらすらと学級会の説明をする彼は確かにかっこいいかもなぁ、なんて。

それくらいだったわたしが瑞稀くんを好きになるのに明確なきっかけなんてものは無かった。

…今となってはここまで熱狂しているのだからさぞドラマチックなシーンのひとつやふたつあったのだろうと思われてしまうかもしれないが、それが全くない。

残念なことに。

強いて言うなら、目が合ったとき。

そりゃ同じクラスにいれば業務連絡くらい交わす機会はある。

少しも思い出せないその会話の間に一瞬合った瞳。

ほんとうに、それだけだ。

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