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『どういう、こと、？』
少し潤んだ瞳がぐらりと揺れた。
一度出た言葉は堰を切ったように溢れ出す。
「っ俺みたいなガキやめなよ。Aちゃんにはもっといい人がいるって。
……もっと、幸せになれるよ」
ほら、俺が幸せにしてあげるよ、なんて言えないって分かったでしょ。だからもう、
『なに言ってんの』
「だから、」
『こうきくんのばか』
涙の溜めて俺を睨む彼女は初めて見る表情だった。
『こうきくん全然わかってない。あたまいいのにね、そういうとこわかんないよねいっつも！』
「……は、」
『わたしのことなんだと思ってんの、わくのことなんかなんっとも思ってないよちょっとでも特別なこと思ってたらふたりで会うわけなくない？なんでかわかる？！』
普段見ることの無い、彼女がまくし立てる姿に呆気に取られる。呂律は怪しいところもあるけどこれがきっと彼女の本音だった。
唇を噛んでじっと俺を見つめる。
『こうきくんが、わたしの好きなひとだからだよ』
じわりと視界が滲んだ。
………あーもうなにやってんだろ俺。
こんなんだからいつまでも子どもなんだ。
ひとりで焦って、不安になって、空回って。
ほんと、らしくない。
「っ、ごめん」
いいよ、
こうきくんだから、ゆるしてあげる。
なんてふにゃっと笑った彼女はそのまま眠りに落ちてしまった。
きっと明日には全部忘れてるんだろうな。
その方が好都合だった。
俺のあんな馬鹿な言葉、頭の片隅にでも残さないで。
ちいさく寝息をたてる白い頬に薄く残った涙の跡。
ごめんね。
全部全部、はじめてなんだよ。
だからって傷付けていい訳じゃないって分かってるけど、
こんなに好きになったのも、
こんなに誰かのことで悩んだのも、
こんなに、触れたいって思うのも
Aちゃんだけだから。
ねえいっそ、ふたりだけの世界で生きていきたいね。
なんて柄じゃないけど。
本気でそんなこと思ったりするんだよ。
そっと首筋にキスを落とした。
紅く咲いた跡はやっぱり大人になりきれない俺のわがまま。
行かないで。
いつまでも、ここにいて。
晴れたり曇ったり、たまに土砂降りだけどそれでもいいから。
ねえAちゃん。
好きだよ。
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作者名：らら | 作成日時：2021年7月17日 13時
