寄せ集め。 (ページ30)

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チープな運命／しょまページ30

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「30歳までだめだったら、俺が貰ったげる」

もうとっくに見慣れた大きな瞳が私を見つめる。
ずっとずっと好きだった、あのひとに振られたてほやほやの私に向ける一言だった。
じゃーあー、なんてそんなに軽く言うセリフだろうか。

翔馬との出会いは運命だったのだと思う。
そんな言い方をすれば恋にでも落ちたのかと思われそうだが決してそういうことではなく。

ただどうしてだか、翔馬が相手だと何の気も使わずにいられた。
逆にどうして今まで出会っていなかったのだろうと思ってしまうくらいの妙な安心感。
私の全てを受け入れて、それでいて彼自身も全てをさらけ出してくれる。
そんな、とても不思議で、だけどこの上なく心地よい関係性だった。

ほんの数時間前。

私の一世一代の告白は見知らぬ大学の空に飛んで、そのまま砕け散った。
高校三年間、まるまる捧げて全身全霊で伝え続けたあの気持ちは二つ年上の彼には届いていなかったようだ。
ステージでベースを掻き鳴らすあのひとを隣で見ていたいと思ったあの日が懐かしい。

「ごめん大切にしたい人がいる」なんてバツが悪そうに綺麗な顔を歪める。
ずっとかわいいと思っていた、困ると頭を搔く癖も今回ばかりは私を苦しめる為の材料にしかならなかった。

そんなので引き下がりたくなんてなくて問い詰めると、どうやら彼女ではないらしい。
じゃあそのひとなんなの？
私じゃだめなんですかと詰め寄ると後ずさられて。

「あのひとのこと、俺放っとけないんだ」

そう切なそうに言った彼の表情があまりに儚くて、私より早く卒業していったこのひとを追いかけ続けた私の青春は、なかったことにされた。

ねぇ、どうして？

先輩！って駆け寄る私に嫌がるみたいな素振りを見せることはあっても、本気で突き放すことなんてなかった癖に。

だからもしかして、なんて勝手に期待して。
偶然装って大学帰りの彼の最寄りで計画的に鉢合わせたこともあった。
子どもは帰りなさいって眉を下げて笑って、私の頭を小突くその骨ばった手が愛おしくて。
彼が年上好きだって、どこかで聞いたような気もするけどそんなこと関係ないと思ってた。

怪我なんてしてなかったのにコンビニ帰りのビニール袋に入っていた絆創膏と包帯。
あれって誰の為だったの？
時折遠くを見つめるあの視線はその、「大切にしたいひと」に向いていたの？

聞けなかった。
なんにも、分からないまま。

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