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ぼおっとそんなことを思っている間に彼らのステージは終わっていた。
次に始まったクラス発表の劇には集中できるはずもなくてふらふらと体育館を後にする。
あれは夢だったのだろうかなんて考えた。
ピンスポットは至る所に当たっていたはずなのにあまりにも彼しか見えない、そんな現象初めてで。
深く息を吐く。
背後から、何かがぶつかり合うような音と話し声がした。
「あ、アイリの友達」
『、え？』
振り向くと目が合った男の人。
ネクタイの色を見るに、三年生だ。
アイリはさっきまで隣にいたあの子のことで、だけどこのひとと何の関係があるのか分からなくて戸惑う。
「あーあのふかだの子？(笑)」
「いや別に彼女とかじゃないから！」
背の高いふたりが何かを言い合う。
突然騒がしくなった。
どちらの背にもギターケースのようなものが見える。
「待ってこの子全然ピンと来てなくね？
…俺ら、
HIDE。
忍ぶ、という意味のその単語はつい先程耳にした気がする。
ただあまりにあのひとに気を取られすぎてほとんど頭には入っていなかったけれど。
「湧、あんま有名人ぶんなよ」
記憶を手繰り寄せていると響いた、心地良い低い声。
ふと顔を上げる。
そこには、あのひとがいた。
「ぶってねぇよ、でもこの学校で俺らのこと知らねえやついる？！」
「いるでしょそりゃ、ほら見てみ？」
客席から穴が空くほど見つめたあの髪が揺れて、顎で示したのはわたしに着いたリボンの色。
「……一年でも知ってんべ？普通」
「いや今日がお披露目みたいなもんでしょ」
アイリちゃんが特殊なだけ。
そう何処か呆れたように言うとわたしに一歩歩み寄る。
切れ長の瞳に、わたしが映った。
「さっき、来てくれてたよね。
……ありがと」
一瞬のことだった。ふわりと撫でられた頭。
想定外の状況に心臓が激しく音を立てる。
顔に全身の熱が集まるのを感じた。
呆気に取られるわたしを他所に、気付いたときには彼はもう既に背を向けていて。
意外としっかりとしたその肩幅に叫んだ。
『っあの！』
そんなつもりなんてほんとうは無かった。
でもきっと、これを逃したらわたしは。
わたしは、二度と彼の視界に映ることはない。
ん？と薄く微笑んだまま振り返った彼。
少しだけ遠い距離に負けないように、ただ感情に任せた。
『さっきの、
……めっちゃくちゃかっこよかったです！！』
彼が、笑った。
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作者名：らら | 作成日時：2021年7月17日 13時
