寄せ集め。 (ページ26)

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なんにもなかったみたいな顔をして教室に戻るといつもの女の子たちとお喋りしてたA。
そのちっちゃい背中にどーんって抱き着いた。

『わっ！……なんだ颯太か。どこ行ってたの？』

「んーと、トイレ！」

なんかお腹いたくてぇ、なんて言えばえ、大丈夫？って心配そうに目をくるんと丸めた。かわいいなぁ。

「ん！もうだいじょーぶ」

そっかってふんわり笑うAはやっぱりおれのことなんでも信じてくれる。
回した腕にぎゅって力を込めて細い指を握った。

遠巻きに男たちがおれらを白い目で見てる気がするけどしーらない。
だからおれのなんだって。何回もいってんじゃん！

Aが動く度にひらひら揺れる長い髪。
昔から嫌がってたくせっ毛はいつの間にかなくなってた。いつか、美容師さんって魔法使いみたいだね！ってうれしそうに言ってたAを思い出す。

ほんとはね、ぜんぶ嘘なんだって言ったらどうする？

ほんとはネクタイくらいとっくに自分で結べるよ。

朝寝癖ついてたのにも気付いてたし、急かすAをすぐに追いかけなかったのはあのタイミングで外に出ちゃうと、いつもAをガン見しながら通り過ぎるチャリの男たちと鉢合わせると思ったから。

おれ、もう赤ちゃんなんかじゃないからさ。
おれなりにちゃんと考えてるんだよ。
ちょっぴり卑怯でも、これがおれの精一杯。

このまんまじゃ男としてなんて見てもらえないってわかってるけど、どうしても手放したくないんだ。
なんにもできないおれなら、Aは離れていかないでしょ？

だいすきなんだよ。
これはおれらが幸せになるための魔法。

え、呪い？なにそれ人聞き悪いなぁ！
期限もやくそくもないよ。

Aがいればそれでいいの。
Aだって、おれがいれば十分でしょ。

これは、素敵な素敵な、おれの魔法。

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