寄せ集め。 (ページ21)

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特別ルール／きょんページ21

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鳴り響いたチャイムに固まる身体。
こんな時間になんて心当たりはひとつしかなくて。
当たらないでと願いながら扉を開けた。

「っなにしてんの」

『……ごめんね、』

虚しくも的中してしまったそれ。ぼろぼろの彼女が顔を伏せた。

「とりあえず入って」

外は真っ暗。
この中ひとりで来たのかと思うと俺の方が怖くなってしまうけど、そんなのいつものことで。
踵の潰れたそんな靴じゃ華奢な身体は支えきれないはずなのに。

「そこ座って。待ってて」

彼女が腰を下ろしたのを確認してから取りに行った箱。
抱えたそれはずんと重たくて、まさか俺の友達は俺が家に救急箱を常備してるなんて思ってもないだろうな、なんて。
俺だってそうだった。男の一人暮らしでこんなもの。

早足で戻ると彼女はどこか一点をひたすら見つめていて。
あぁ、今回はなに？

「こっち向いて」

ちいさな顎を掴んでやっと合った視線。
この歳になって傷の手当てが特技になるなんてね。

家にいるだけにしてはきちんとしているその服装は胸元の辺りに皺が寄っていた。
丁寧に施されているはずのメイクも所々剥がれていて。

顔に付けられた痛々しいそれのひとつひとつに消毒液を染み込ませていく。
時折彼女が顔を顰めるけどどうしようもないから。
ちょっと我慢してねなんて心の中でだけ思った。

「他は？……手見せて」

素直に差し出された腕には案の定血が滲んでいる。
掠り傷と切り傷の混ざったそこは赤く光っていて、真っ白な肌がより際立った。

『…わたしね、間違えちゃったみたい』

俺の手先に視線を落としたまま蚊の鳴くような声でぽつりと呟いた彼女。その瞳は黒く、力をなくしていて。
どうしたのと俺が聞くことは、いつだって無かった。

話したいなら話せばいい。嫌なら黙ってそこにいて。
俺のとこに来てくれるだけで十分だから、俺じゃ足りなかったならすぐ忘れてくれればいい。

『今日はね、珍しくにこにこして帰ってきてくれてね。だから嬉しかったの、楽しかったのに、』

きゅっと握り込まれた手のひら。
下を向いて、唇を噛んだ。

『わたしが、壊しちゃった』

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