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『ねぇ那須雄登〜！！』
どたん！と派手な音をたてて開かれたドアと同時に飛び込んできたA。
「っるさ、なに？」
『これ。壊れた直して！！』
そう、ずいと目の前にいつもこのひとが使ってるパソコンが突きつけられた。
「どうやったらパソコンが壊れんの？」
『しらない。だって動かないんだもん』
「俺電気屋じゃないんだけど」
『いけるよ、那須雄登だもん』
めちゃくちゃだこのひと。
初対面のあの日から早一ヶ月程が経ち、初めは俺も挙動不審になってたけど流石に慣れてきて。
まぁどうにか上手くやっていけるか、なんて。
そう思った俺が馬鹿だった。
『ねぇほらはーやーく！』
そうがんがんと叩かれるパソコン。
可哀想に。そういうことしてるから壊れんじゃねーの。
…そう。この女、綺麗だけどそれは見かけ倒しも酷いもので。
何考えてんだかさっぱり分からない、ただの破天荒女だった。
はぁ、とひとつ吐き出した溜め息。
仕方なく開いたそれは確かにおかしなことになっていた。
「分かんないなら最初から潔く諦めなよ」
機械音痴の癖に自分でどうにかしようとするからこんなことになるんだろ。
『いけるんじゃない？って思っちゃったよね』
「過信はよくないよ」
ごめんなさーい。なんて全く思ってないみたいに謝るからついでにもうひとつ溜め息。
あーあ、また幸せ逃げたよ。
そう思いつつも解決策を見つけるべく、いろいろ弄ってみる。
あ待って、分かったかも。
「ねぇこれ、」
突き止めた故障の原因を伝えようと顔を上げたその時。
「…びっ、くりしたなんなの」
結構な至近距離で交わった視線。
真顔のまま正面から俺の顔を見つめ続けるその表情は相変わらず何を考えてるのか分からなくて。
なんなの、なんて余裕振ったけど心臓が大きく跳ねたことに気付いた。
自然な赤みが差した艶めく唇が動く。
『那須雄登ってさ、
…かっこいいよね』
一ミリだって目を逸らすことなく告げられたそれ。
何かが、ぷつんと切れる音がした。
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作者名：らら | 作成日時：2021年7月17日 13時
