寄せ集め。 (ページ16)

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『知ってるよ』

…は？さらりと口にされた言葉。

いやいやいや、え？
知らないの覚悟で聞いたつもりだったんだけど。

平然とした綺麗な顔に俺が間違っているのかとすら思う。

実はなんか見たことあるかも、くらいの感じは期待してたり、してなかったり…

でも知ってたらもうちょいリアクションしない？
騒いだりするもんじゃないの？

なんて、ひとりパニックに陥る。

俺って当たり前のように知られてるレベルじゃないと思うんだけど。

『けど大丈夫。

わたし自担にしか興味無いから！！』

本日最高級の笑顔とともに落とされた爆弾。

待って自担いんの！？衝撃の連続に頭が回らない。

「え、え、ちょい待ってくださいね、？

えーと自担？…誰、ですか、ね、？」

めちゃくちゃたどたどしいし更にキモい感じになってるのは許して欲しい。

俺が頭ぐるんぐるんに回転させてる間もこのひとは謎ににこにこしてるから余計意味が分からなくなる。

『そうたくん』

語尾にハートすら付ける勢いでそう言われ、頭の中で「そうたくん」を一斉検索。

ヒットしたのは、

「えー、と…うっ、ちー？」

『うん』

ビンゴだった。
にっこりと笑って頷く姿はめちゃくちゃに優しくてあぁ、ファンの子ってこういう顔するよな、なんて。

心の底から愛おしいものを見るような、そんな顔。
それに応えたくて俺はステージに立ってる。

そして、自分の立場を思い出した。

え、待ってやばくない？

いくら俺の事眼中にないとしても一応同じ事務所のタレントだぜ？

特別仲良いってわけじゃないけどうっちーとこのひとを繋げようと思えば普通に出来る。

その状況も多分やばいし、それにこのひとが
”わたし那須雄登と一緒に住んでる！” とか言ってしまえば一発アウトだ。

昨日今日出会ったような彼女に信用は…まだない。

『あ、心配しないで！
わたし別にそうたくんと繋がる気とかさらっさら無いから。めんどくさいから君の話他でしたりもしないし。』

俺の気持ちを見透かすように放たれたそんな言葉。

どこまでを信頼していいのかなんて全く分からないけど、俺のそこそこ平穏な生活がこの無駄に美人な、姉(仮)にかかっているのだけは確かだった。

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