復活love〝II〟 (ページ41)

今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:82,356 hit

消えた絵ページ41

Osaid

大野｢...ふぅ｣

静かな空間に筆を置く音が響く。

やっと、完成した。

改めて完成した絵を見てみると

自分で描いたものなのに初めて見る感覚だった。

大野｢...うん、すごくいいじゃん...。｣

この完成した絵は、
本当は個展には飾らないはずの絵だったが

急遽、個展の目玉として描くことになった。

いや、正確に言えば俺が描きたかった絵だったがある理由から描けなくなった絵だった。

俺の元恋人...

櫻井翔と別れてから描けなくなったんだ。

・

翔くんと出会ったのは大学の文化祭だった。

美大に通っていた俺は文化祭に向けて大きい真っ白なキャンバスに色んな色をのせて描いた。

でも、周りからはテーマが伝わらないだとか
構図がめちゃくちゃすぎるって不評だった。

それでも、自分が好きな色、好きなように描いた絵を見てもらいたかった。

でも、やっぱり周りが言う通り
賞や、声がかかる事はなくて

ただ自分が描いた絵をボーッと眺めてた。

そしたら、隣から元気一杯な声が聞こえてきた

櫻井｢うわーすっげぇ！！ちょー綺麗！｣

俺がその声の主を見ると俺と同じくらいの男性が目を大きく開いて食い入るように俺の絵を見ていた。

それがなんだかモヤモヤして、気づいたら自分から声をかけていた。

大野『あの...この絵、何がそんなにすごいんですか？』

俺がそう聞くと翔くんは一瞬キョトンとしたけどすぐにはじけるような笑顔になって教えてくれた。

櫻井『だって！色んな色で綺麗じゃないですか！なんというか...迷いがないような！』

大野『迷い？』

櫻井『なんとなくですけどね(笑)俺はそう感じたんです。この絵を描いた人もきっと白いキャンバスのように綺麗なんでしょうね！』

その時の翔くんの言葉は今でも覚えていて

時々、挫けそうになる時の糧にしていた。

結局、その時の絵は翔くん以外からは評価されることはなかったけど

あの時の俺には充分すぎるくらいだった。

しばらくして、また別の機会で再開した俺らは段々惹かれあって付き合ったわけだけど

付き合ったら別れもあるもので

制作中だった絵を残して俺たちの６年間の思い出は幕を閉じた。

...できるなら別れたくなかった。

今もこうして再開してしまい、あろうことか翔くんへの気持ちは会う度に大きくなる。

そして、この絵が完成した今。

俺の気持ちを君に伝えることに決めた。

自分らしくキャンバスにのせて...ね。