いや、俺男なんやけども。【稲荷崎】【男主】 (ページ28)

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キョトンと此方を見る双子を無視してバッグからペンとノートを取り出す。

北さんの一声で再開した練習。

ペンを片手に彼らのプレーをじっと観察する。

スタメンを中心にプレーの癖や特徴、弱点等を見て取れる範囲と臆測で書きなぐる。

スタミナがなくたって……練習に参加できなくたって…何も出来ないわけとちゃう。

俺は、今…俺にしかできないことをやるんや、練習出来ないからなんや、死ぬんか？

…ちゃうやろ、これはチャンスや！

それからは早かった。
先程までうじうじと考えてたのが信じられないくらいの集中力で、一人一人のプレーを観察しノートへまとめる。

ふと、ピーッと笛の音が鳴る

北「今日の練習は終いや、集合。」

どうやらもうそんな時間らしい。

あっという間に3分の2は文字で埋め尽くされてしまった新品だったはずのノートをパタンと閉じ、集合がかかった場所へ向かう。

監「練習おつかれさん。

＿＿＿＿(前略)インハイ予選も迫ってきてるとこやし季節の変わり目や、怪我と病気に気をつけて自己管理怠るんやないで」

ミーティングが終わりモップがけをしながらさっきの監督の言葉を思い出す。

監「＿＿で、今回のインハイ、橘は怪我で出られんくなったコイツの代わりに控えのリベロとしてベンチ入りしてもらうで」

監督の指の先には足首に包帯を巻いている1年リベロの高橋くん。

1年でユニフォームを貰えるなんて相当な実力やろうに…怪我ならしゃーないけど俺に代理なんて務まるんやろうか。

ブランクもあるしな。

…ま、正リベロは赤木さんやし自分に出番が回ってくることはないやろうけど

なんてボーッと考えていればあっという間に片付けは終わる。

部室で着替えを済ませ、雨は止むも曇ったままのどんよりとした夜空を眺めつつ、2年連中と並んで帰路に着く。