いや、俺男なんやけども。【稲荷崎】【男主】 (ページ24)

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右手へ伸し掛る重みに目を覚ます。

『……？』

見覚えのない天井にハテナを浮かべつつ右側へ視線を向ければ、手を握ったままそれを枕にしながらすやすやと眠っている侑がいた。

「なんや、起きたん？」

少し開いたカーテンの隙間から覗き声をかけてくるのは保健室の本田先生。

『…えと、』

本「その子、起きるまでここにおります！ってずっと手握ったままだったのよ」

可愛いでしょと微笑みながら言う本田先生から侑へ視線を戻す

俺はさっきの出来事を思い出していた。

もうダメや思った時にヒーローのごとく現れた侑は、俺のために、俺のためだけに怒って、衝動かも知らんけど自身を顧みず、あの時だけは俺のために……

心の奥がじんわりと温まるような不思議な心地がした。

『…ありがとな』

自分とは違う世界に生きているからと中身を見ず、関わりを避け続けてきた今までの自分を殴ってやりたい。

そんなことを思いながらまだ寝ているであろう侑に小さくお礼をする。

侑「…ん、、はっ！起きたん、橘くん！！大丈夫か！？俺が来る前になんもされてへん？…ってかこの腕の傷なんやねん！それにほっぺたも…！！」

ピクっと眉を動かし、ガバッと起き上がったと思えばがっしりと肩を掴み質問攻めにしてくる侑に思わず笑みを零す

『…ふはっ、ちょ、落ち着けや。んな心配せんでも…俺はもう大丈夫や』

久しぶりに心から笑えた気がした。

……もう俺は大丈夫、侑が…治に角名に銀島、北さん……俺の周りには優しいやつがいっぱいおる。俺のために怒って俺に手を差し伸べてくれるやつらが。

『…もう、大丈夫や』