いや、俺男なんやけども。【稲荷崎】【男主】 (ページ18)

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17話ページ18

3セット目終盤。
24：22

相手のセットポイント

笛と同時にサーブトスを上げる相手チームのエース。

スタミナも限界で、相手もそれをわかっているのかリベロである自分を狙う。

＿＿バンッ

ボールの真正面を位置取るが、中学生とは思えない勢いのボールに、疲労が限界な為か吹き飛ばされてしまう。

スローモーションの様に見えたボールは、呆気なくコート外へ落ちる。

ピーッ

試合終了の笛が鳴る。

チームメイトの鋭い視線が此方へ向き、目を合わせられなかった。

姫路中学男子バレーボール部
地区大会決勝戦敗退

気づいたら閉会式も片付けもミーティングも終わっており、部室にいた。

「……お前のせいや！！」

皆が黙々と着替えている中ふとそんな声が聞こえ振り返る。

「…お前が最後ちゃんととらんかったから……っ、俺らはあれが最後やったのに！！2年の癖に3年生差し置いて試合出ておいてようあんなミスしでかせたな！」

静かな部室に先輩の悔しさと苦痛に満ちた声が響く。

『…すんません、』

涙ひとつ見せない自分に腹が立ったのか先輩はつかみかかってくる。

途中で顧問が止めに入ったからその場は収まったものの、部員と自分の間には大きな溝が出来た。

それから数ヶ月経ち、進級。

中学三年生になった。

あの日から溝は深くなるばかりで、練習もまともに進行出来なくなっていた。

そんな中、顧問に呼び出される。

「…自分、バレー部辞めや」

自分以外は普通に仲がいい。…部の雰囲気を壊しているのは自分で、いない方がいいなんてことは分かりきっていたことだったからか、そこまでショックは受けなかった。

┈

本人の居ない顧問のデスクに退部届けを置き、職員室をでる。

物心ついた時からバレーに触れ、今までずっと続けてきた。

……もうバレーは続けられない、実感がわかずただひたすら虚無感に襲われた。