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焦れったくて、長い、甘いキスだった。
顔を離した時の恵の表情は、どこか寂しそうで悲しそうで、でも火照っていた。
自我を保とうと「い、今お皿洗ってるから……」と言って洗い物に戻ろうと蛇口に手をかけたが、その手すらも恵は掴んで「後ででいいだろ」と耳元で弱く呟いた。
それに体が反応する。
「ま、まだ……手汚れてる……」
何とかしてこの状況を抜け出そうとする。本当はそのまま襲って欲しいのだが、そんなに簡単に恵の初めてを奪うわけにもいかない。
「このままでいいだろ」
恵はそう言ってから、私のうなじから首にかけての間を思い切り噛んだ。
本当にその日は静かで、私の呼吸と恵の荒い息、咀嚼音と泡のはじける音だけが残っていた。
背中になにかが伝っていく感覚がした。
「…………痛かったか」
「………え…?」
私の首あたりを見ると、血がじわっと出ていた。
「……痛かったけど……」
痛かったけどじゃない。大分痛かった。そのせいで今、視界が歪んで見える。
「……いいか」
恵が私に問いかけた。
その意味なんて、考えなくてもわかった。
「…………恵はそれでいいの?」
私が被せるように問いかけると、恵は少し顔を赤くしながら「…………お前しかいねぇんだよ」と弱々しく、誰にも聞こえないくらいの小ささで言った。
恵がこんなことを他の女性にも言えるとは思わなかった。
だから許してしまった。
ちゃんと恵を感じた気がした。
この時が1番生きている意味を感じた。
幸せを感じた。
もうあんなところに戻りたくないと感じた。
そして何より、恵が名前を呼んでくれた。
嬉しくて嬉しくて、涙をだしながら笑顔になった。
「……俺、本当は」
2人横たわった時、恵が口を開いた。
「お前に会った時から、自分の感情を押し殺してた」
「……どういうこと?」
仰向けになっている恵の横顔が綺麗だなと思っていたら、寝返りを打ってこちらを向いたので、私もそっちを向いた。
「お前は俺と似てる。だから素の俺を、認めてくれるんじゃないかって思って」
私はそれを聞いて、共鳴した気がした。というより、共鳴した。
「それ、私も思ってた」
真夏の夜中はまだ蝉が鳴いていて、じめっとした暑さが私たちの肌に密着してくる。
「私、恵と会って恵と話して、やっぱ運命なのかなって思ってたんだ」
思わず笑ってしまうと、恵も目を細めた。
「…………そうなのかもな」
「ほんと今日の恵、らしくない」
そう吐いたあと、私たちは眠りについた。
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コーンクリームコロッケ(プロフ) - ありがとうございます!きゃーっ♡♡嬉しいですー!頑張ります!! (12月7日 7時) (レス) id: 45395c9c17 (このIDを非表示/違反報告)
金糖の少女#全糖ではございません - みんな!!!伸ばせ!!最近別サイトに浮気してたからうらツク戻ってきてこんな面白い神作に会えるなんて…!!この感じ…運命なんです!!うおおお!!!上にあげるんだ!!! (12月6日 20時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - オリジナルフラグ立っちゃってます!設定タグの所から消せるのでやってみて下さい! (12月6日 20時) (レス) id: 53388cefbe (このIDを非表示/違反報告)
LuNa(プロフ) - コーンクリームコロッケさん» オリジナルフラグが立ってますよっ!💦 (12月6日 20時) (レス) id: de0c19e396 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮。(プロフ) - めっっちゃ甘々でよかったです〜!!💕💕甘すぎて死ぬかと…多分ですが、二次創作ではオlリlジlナlルl作品というタグを使用してはいけないので外した方が良きかもです!小説書く所?の下いけば外せるのでやってみて下さい! (12月6日 18時) (レス) @page27 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コーンクリームコロッケ | 作成日時:2023年9月4日 15時