伍拾参 ページ6
昔言われた事。思い出すと、やはり心が痛む。
私は少し俯きながら、竈門さんに頑張って話しかけた。
「私、は、哀柱、なんです。」
チラッと竈門さんを見ると、真剣な眼差しで聞いてくれていた。
私は、そのまま続けた。
「私の、呼吸の事、もうご存知かもしれませんけども、」
私の呼吸、つまり悲哀の呼吸。
それは、もうそのまま文字通り、
「自分の悲しみからしか、使えないんです。
自分の心身に傷を負っている時しか、
使えないんです。」
そういう風に、教えられてきたから。師範に。
だから、もう諦めていた。
師範に、お前ほど生きている価値のないものはいない。って言われた時も、
悲しかったけど、納得できたし、
師範に、私が捨て子だったって言われた時も、
悲しかっけど、生まれた時から愛されなかったんだな、って苦しくてなったけど、
矢張り、納得できた。
納得してしまった。
もう、今生に希望はないと思った。
だから、最後、人の為に闘って死ぬ事で、次生まれる時に愛される子に、神様がしてくれるって、勝手な淡い期待を持っていた。
でも、皆さんに出会った。
柱の皆さんや、竈門さん達、蝶屋敷の人達等、とても優しい方々に。
少しだけ、心から笑ってみたいって思うようになってしまった。
皆さんに出会ってから。
少しだけ、一人で居るのが寂しくなってしまった。
皆さんに出会ってから。
少しだけ、人を信用できるようになった。
皆さんに出会ってから。
そして、
少しだけ、幸せになりたくなった。
皆さんに、出会ってから。
「竈門さん、
私は、幸せになっても、幸せを願っても、
いいんでしょうか?」
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ハルル - とっても面白いですね。続き楽しみにしています! (2021年4月2日 16時) (レス) id: 3ed8831ca6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蔚 | 作成日時:2020年1月13日 21時