流星の詩（yb×hk）▼yb side

▽ ページ22

中学三年の１２月１３日。
あの日のことを俺は一生忘れないと思う。
走って頬に当たった夜風は寒いというよりも、
もはや痛くて、まるで刺さるようだったこと。
そして、凍ってるみたいに冷たかったキミの手。

ごめんね、光。
本当に、ごめんね。



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


１２月１３日。

クリスマスがもうすぐだったけど、大してワクワクもしなかった。
もう何年も前から俺のところにサンタさんは来てくれなくなっていた。
サンタさんを信じられるほど子供じゃなかった。サンタさんになれるほど、大人でもなかったけど。

あの頃、俺の父さんは仕事が忙しくて、その日も帰ってきたのは11時を過ぎていた。
俺は風呂上りで、まだ髪も乾かしてなくて、着倒してクタクタのグレーのスウェットを着ていた。
風呂上りの牛乳は上手い。


「ただいま。まだ起きてんのか。早く寝ろ。」
「おかえり。もう寝るよ。」
「あ、待て！宏太、お前さ、今日空見た？」
「…は？」

思春期真っ盛りで、親なんて鬱陶しかったのもあって、俺はしかめっ面でそっけない返事をした。
帰ってきて早々「空を見たか？」と聞く父親もなかなか意味分かんないし。

「見てない？ちょっと、見てみ！駅からの帰り道、星がすごくて父さん感動しちゃったよ。」
「星なんか…いつも見えてんじゃん。田舎なんだから。」
「いやいや！星っつっても流れ星だよ！ねぇ、母さんは見た？」

父さんは興奮した面持ちでコートを脱ぐと、母さんにそれを手渡した。

「あぁ〜、見てないや。そういえば朝ニュースで言ってたわね。ふたご座流星群だっけ？」
「・・・え？」
「はぁ〜！流星群だったのか！」
「あ、ホラ、またテレビでやってるよ。」


テレビで流れていたのは、夜のニュース番組のお天気コーナー。

【今夜はふたご座流星群☆】

画面の右上にでかでかと映るテロップ。


"今夜は１年ぶりに、ふたご座流星群が見頃を迎えますよ！皆さん、空を見上げてみては！？"

テレビの中では気象予報士のおじさんが、自分の手柄でもないくせに、なぜか自慢げに微笑んでいた。



ガシャンっ！！！！


手に持っていたグラスを思わず落としてしまった。
グラスの中に残っていた牛乳が、床をびしゃりと濡らした。
幸いグラスは割れなかった。


「やだ、ちょっと〜…何やってんのよぉ…」
「…かよ…」
「え？」



「今日かよっ！！！」


俺は叫び、そして走り出した。
自分がこぼした牛乳さえ拭かなかった。

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す