文学少女と科学少年10 ページ10
「...千空。良かったのか。Aの復活液を使って」
「あぁ、アレな。また集めりゃなんとかなるだろ、それより杠を...」
「いや！俺は待つぞ！！また溜まるまで待つ！千空、これでフェアだ」
キャンプ地へ司を引き連れて戻った際、屈託のないような笑みでこちらを見る3700年前と全く変わらない大樹に自然と口元が緩くなる。
世界がどれだけ変わろうと、コイツだけは何も変わっちゃいねえ。
いつも通りのデカブツだ。
ただ...俺の引きの悪さも3700年前と全く変わってないがな。
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獅子王司は、良い奴で人殺し。
全人類もれなく助けたい俺と、純粋な若者だけを復活させて新世界を築きたい獅子王司。
武力を持っている司が今の所最強だ。
俺はプランを頭の中で思い浮かべてはすぐに消し去る。
どう転がっても上手くいく確率はたかが知れてるじゃねえか。
考えうる最前の方法を試すしかねえな。
杠の復活液が少し足りないと大樹に伝えると案の定司が自分が行くと名乗りを上げる。
もう復活液を捨ててでもこうするしかねえ。
大樹は俺が言うならそうだろう、と納得してくれている。
ソッコーで杠の復活液を作る。
司が帰ってくるまでに...！
大樹から預かった元々杠用だったAの復活液を俺の腰に入れる。Aの復活はもう少し後だ...司に唯一まだ見られていない存在だ。
知られたらどんな人質にされるか分からねえ...！！
「急いでるっつってんだろがデカブツ！」
「うおおお いきなりバシャっと！なんかもっとこう...あるだろー！」
ピシピシとヒビが入る。
コイツにとっちゃこれ以上ないほど待ちわびていた日だろうな。何百年、何千年とこの瞬間を待ってたんだ。
隣に立てかけていたAを見る。
コイツもさっさと起こさねえと、文明の記録はコイツにしか出来ねえ。俺にはコイツが必要だ。
目覚めた杠と大樹が感動の再会をしてる中
俺は勢いよく持っていた復活液をAにぶっかける。
後ろで大樹が勢い良すぎないか！？と驚いているのは気にしねえ。コイツにはこれくらいが充分だ。
ゴツゴツしていた石の皮膚にヒビが入る。
起きたばかりの杠も復活する様子に目が離せないようだった。
石が完全に砕けて何千年振りかのしなやかな体を抱きとめる。
腕に残る、確かな人の暖かさに静かに泣きそうになる。
あぁ...とことん不合理的だな、これは。
「やっと起きやがったな、A。随分と寝坊したじゃねえか」
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
