文学少女と科学少年49 ページ49
『教育、チーム？』
「ああ、チームっつってもAだけだがな。ついでに俺ら科学チームの記録もとりながらなんつー、クソほどキツい役割だ。どうするかはお前に任せる」
私は思わず笑みが溢れそうになる。何ていう偶然。いや、千空ならここまで読んでいたのかもしれない。
笑いたくなる気持ちを押しこらえて私は力一杯返事をする。
『任せて！予め黒板の材料とチョークの材料はクロムの科学倉庫で確認してあるからね』
「ククク、抜かりねえな」
ああ、ワクワクしてきた。数千年前の旧現代ではいつか人にものを教えられる職業につけたらどんなにいいだろうと思っていたけど、まさかこんな形で叶うなんて。
千空には改めて感謝しかない。
私は早速黒板作りに取り掛かろうとしたが千空に引き留められる。不思議に思っていると、どうやらガラスを作るついでにスイカにメガネを作ってやるそう。
スイカが目が悪かったことに衝撃を覚えたが何より、原始人の民はメガネという当たり前にある物すら知らなかったのかと改めて思わされた。
『スイカ、そのボヤボヤ病は治せるんだよ。綺麗な景色を見れるんだ』
「そうなんだよ...？スイカ、もうボヤボヤ病にならなくてすむんだよ？」
「ああ、速攻で作ってやるよ」
私と千空が微笑むと、スイカはほぼ泣き笑いの状態で微笑んだ。そうと決まれば取り掛かる。
コハクが金狼銀狼の稽古をつけている間に私とクロムと千空がメガネ作りに励む。なんたって作ったことがないものだから、楽しすぎて科学をよく知らない私でもワクワクする。
レンズが出来ればスイカの度数に合わせて被り物にすっぽりはめる。
物は試し。レンズ入の被り物とスイカをひまわり畑に連れて行って反応を試そうという魂胆だ。こんだけ綺麗なんだ。スイカにこの景色を早く見せたい。
千空がスイカに被り物をかぶせる。
その瞬間、スイカの頬に涙が伝った。思わず私も涙が出そうになる。いけない、こんなに涙脆くては。
「こんなに綺麗な景色...初めて見たんだよ」
「ククク、王国の労働力パワーアップだな。ガラス器具でガンガン薬品作んぞ」
「労働力言うな！いい話でまとめとけよ！」
『どこまでも合理的すぎて...声も出ない』
でもそんな合理的な彼だからこそ、人が集まる。
合理的なのに、優しいのだ。石神千空という男は。
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
