文学少女と科学少年48 ページ48
結果論で言うと、あさぎりゲン殺人事件(死んではいない)の犯人は村一番の暴れん坊であるマグマだったと名探偵スイカのおかげで分かった。
あさぎりゲンを科学王国の仲間に完全に入れることが出来てホッとする間もなく告げられたその言葉にコハクは思い当たる節があるのかポツリと話し始めた。
この集落では昔から巫女の夫を決める「御前試合」という大きな大会があるそうだ。
当然、18になったルリの夫を決めるためにその大会は開かれたのだが、大きな問題が発生した。
マグマという男は長の座だけを欲していて、あわよくばルリを病気に見せ掛け殺そうとしていたらしい。
その言葉をコハクが聞き、決勝で結局コハクが買ってしまい、これでは勝負のラチが開かないので来月に仕切り直すそう。
しかし、マグマが長の座についてしまえばもうルリに薬を渡すことすら叶わなくなるどころか、私と千空がこの村に居られるかどうかすらも怪しくなってくる。
『マグマが長になったら、詰みだね』
「ハ!逆にチャンスでもある。『科学王国民の男がマグマを破って優勝。ルリ姉と結婚して長になる』そうすれば全ては解決する」
コハクの強い瞳は、ここに居る全員をやる気にさせる力がある。無論、そういうことなら全力でサポートしていきたい。
コハクが門番である金狼銀狼を勧めた為、何とか説得して二人は納得してくれた。コハクの真剣な目が伝わったのか金狼も銀狼もとても真面目に特訓を始めた。
...特訓を始めたのはいいものの、私には少し気がかりなことがあった。
クロムは、この事をどう思っているのだろうか。
なぜならクロムはきっと、ルリの事が好きで、大切に思っていて...。
そう思っていると、コハクが同じような内容を化学倉庫で金狼銀狼を眺めていたクロムに声を掛けた。
「クロムテメーがルリに惚れてっから金狼銀狼がルリと結婚の作戦をメンゴメンゴっつってんだよ!」
「ズッバズバ行くないつもながら君は...」
『いや本当に...もう少しさあ、なんかこう...』
コハクと男のこういう気持ちは心底分からないというような気持ちを分かちあっていると、化学倉庫から身を乗り出したクロムが優しい笑顔をしていた。
「科学の万能薬でルリが治って、幸せになってくれりゃそれ以上の願いはねえよ。なんせ俺は天才科学使いだかんな...!!」
妖術使いと名乗っていたクロムがもう懐かしく感じる。
クロムは、とても強い人なのを私は忘れていたようだ。
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作者名:うらら | 作成日時:2023年3月18日 20時