文学少女と科学少年45 ページ45
ゲンの顔を横目で見る。
あっけらかん、という言葉がこれ程までに似合う状況があるのかと私もつい唖然としてしまう。
「してやられたねえ、見事に」
観念しました、と言うように手を挙げてまたヘラヘラと笑うゲン。
まだ貴方の本当の、奥底の表情は見えないけれど＿＿
今、ほんのちょっと、掴めたような気もする。こっからは千空の出番だ。あの科学少年は複雑そうに見えて意外と単純なんだ。
だから人が自然と集まる。千空は大樹こそ自然と人が集まると思ってるようだが千空だって例外では無いんだ。
科学に正直に生きてきたから、それが周囲にも痛いほど伝わるから、彼の周りには人が集まる。
なんたって私もその一人だ。
夜、腕力発電機から伸びる銅線を私とコハクで引っ張り、化学倉庫の屋根の上へと登っている千空とクロムに手渡す。
隣のゲンが不思議そうに何をするのか、と見ているが千空が竹の繊維と銅線を繋ぐとなにか思い出したかのようにゲンが呟く。
「あ〜！そうかアレ、エジソンか〜」
エジソン、電球で私たちの夜の生活を暗闇から光へと一気に変化させた人。
人類が、科学で夜に勝った。
昔千空が話してたことを思い出す。その時はエジソンなんて図書館に必ずあるし読んだ事あるからそれくらい知ってるんだけどな、と思ってたけど今は重みが違う。
3700年もの間、再び世界は夜の暗闇に包まれた。
そして3700年が経った今、時間にして一秒にも満たなかったが確かに私の目に映ったのは
白くて眩い、千空たちの科学の灯＿＿＿＿＿
ああ
『...暖かい』
ゲンはその場に座り込んでしまい、最早一周まわって笑っていた。
「石器時代に電気だよ、ジーマーで。こんなもん見せられちゃあねえ〜？司ちゃん」
『んふふ、これで彼の魅力が充分に伝わったでしょう？』
「もう伝わり過ぎちゃってバイヤー」
やはり千空には不思議な力がある。とても魅力的な、人を寄せつけずには居られない性質。
私は彼のそんな性質が大好きだ。
性質だけじゃない、彼の科学に対する情熱や好奇心は私を熱くさせる。
「メンタリストからのアドバイス」
突然ニヤニヤしだしたゲンに私はハテナを浮かべながらゲンの言葉に耳を傾ける。
「千空ちゃんへの猛烈な視線は控え目にね〜？ゴイスー分かりやすいから」
『なっ』
体中が熱くなるのを感じる。熱すぎて茹でダコになってしまいそうだ。
...やはりメンタリストとは恐ろしい
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
