文学少女と科学少年43 ページ43
「しっかし千空ちゃん発電所って、火力発電？風力発電？まさかの原子力発電？」
科学王国に戻り、先程一瞬だけ感じたゲンの違和感もさっぱり無くなったように話し始める。
私の、気にし過ぎだといいのだけれど。
ゲンの言葉に千空はあっさりと腕力発電、と答える様子に思わず苦笑する。いやもう、ですよねって感じなんだよね。
銅板を薄く伸ばして、二枚の円盤を作る。
クロムと私で銅板を伸ばし、コハクとスイカで円盤にするために削る。
作業には何のトラブルもなく順調に進んでいるのだが...一つだけ気になることがあった。
『千空...その顔、大体は察したけど。凄いね』
「うるしかぶれな。あんま気にすんなよ」
そうは言われても、ねえ。
ゲンもツッコミたくてうずうずしているように見える。
まあその後も作業を続け、完成した頃にはもううるしかぶれの腫れもきれいさっぱり引いていた。
科学王国特性の、手回し発電機。
作ったのはいいのだが発電させるには息のあった二人の人手が必要だ。
...ん？息のあった二人？
皆がいっせいに同じ方向を見る。
ゲンが何を思いついたのか、金狼と銀狼に近付くと、旧現代人なら誰でも無理だとわかる科学をこれまた薄っぺらく話す。
んー...ほんと、ゲンってばメンタリストなだけあって怖い。
私の千空への気持ちも気付いてたりしないよね？
気が気じゃなくなってしまう。
私が一人勝手に慌てていると、うおおおという物凄い二つの叫び声とともに円盤を回す金狼銀狼ペアがいた。
さすが兄弟、感心してしまうほど息ぴったりだ。
「ホントにアレで節電できてんの？」
科学を全く知らないゲンが不思議に思って聞く。
そこに千空がゲンに蒸し焼きにした竹の繊維を見せる。これで発電するらしい。
ふむ...コレは、あれだな。
千空の始まりの伝記とか言ってたやつだ。
とりあえず、夜までは発電が溜まるのを待つことになり、千空とコハク、それからスイカは金狼と銀狼の見守り&発電の準備。
私はと言うとゲンのお目付け係だそう。
...よりによって私か。
先程、ほんの一瞬だけどゲンが怒ったような顔をしていたのが頭によぎる。
勘違い...だと思いたいけれどあれだけ恐ろしいほど笑顔を絶やさない男だ。
尚更あんな顔、怖くなる。
無言の時間に耐えられなくなり、もうどうにでもなれとゲンに話しかける。
『私、何かした？』
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
